ある場所が観光客向けの写真スポットになっており、自然発生的にできていた順番待ちの列に驚いた週末。長い時間待って写真を撮っても、ソーシャルメディアに投稿したら、もう二度と見返さないんじゃない?と憎まれ口を叩く私も同類で、旅先ではシャッターを押しまくる。先の3ヶ月の旅では一体何枚撮っただろう。不思議と脳裏に、そのときの空気感までくっきり残っているのは、写真を撮れなかった場所だ。
チェコ、プラハから電車とバスで1時間くらいのところにある小さな街、クトナーホラ。4万体の骸骨のオブジェが迎えてくれるセドレツ納骨堂が有名。これが見たくてチェコの1日を費やすことにした。こぢんまりした街の規模に相応しいこぢんまりとしたお堂で、以前は自由だった写真撮影が、今は一切禁止になっている。賢いと思う。骸骨のオブジェだなんてネット受けしやすいものがポストされたら、たちまちバズって観光客が押し寄せる。そんなことになれば、きっとこの街の穏やかで長閑な雰囲気はたちどころに壊れてしまうだろう。圧巻の景観だけれど、特別な関心や信仰がない限り一度見れば十分な場所という気もする。だから、二度と訪れることはないと思うけれど、夏に行ったから、夏が来るたび、あの雰囲気を思い出して、いつまでも記憶の中にとどめておきたい場所のひとつではある。
春先から円安も手伝ってか他国から訪れる友人たちを案内して回ってきたけれど、みんなまず開口一番「観光地観光地してないところに行きたい」と言う。東京って、極端な話、「観光地」か「住宅地」のどっちかじゃないかな。最近はその住宅地でさえ、ちょっと雰囲気の良いところはネットに写真がバンバン上がって人が来だして、お店もできて、あっという間に観光地になってしまう。ソーシャルメディアの功罪だよね…。
それと「観光地でないところ」の意味がやっぱりよく分からない。「あなたたちが普段よく行く場所」って言われても、東京の場合、どこもたいてい観光地化しているから、日常で観光地行ってますけどもね。と、説明しておきながら「その中でもあんま観光客来ないところ知ってるよ」と言って観光客を案内してしまう矛盾よ…。