『ザ・コントラクター』観たー(WOWOW配信)!あらすじだけだとすでに大量に存在するアクションサスペンスと変わらないのですが、クリス・パインが主演しているだけあって、ジャンル映画としての娯楽性を維持しつつ強い社会批評と印象深い心理描写のある佳作でした。ル・カレ的な個人の苦悩が世界の謀略に直結する悪夢的サスペンスでありつつ、きっちりドンパチやってくれる。ベルリンでこのテーマながら、映像は『ボーン』シリーズからちゃんと離れている感じもしてよかった。
『ザ・コントラクター』、主人公が抱える心の傷に関する回想や妄想が現在の物語に何度かシームレスに挿入されていて、その現実との境のなさの塩梅がフレッシュだった。普通もうちょっとわかりやすくすると思うのだけど。透明感のある撮影とあいまって、主人公にとって未だその傷が現在進行系である感じ、しかしその傷によってこそ彼が前進できる感じ、が力強く表現されていた。後半の彼の行動や、幕切れのなんとも捉えがたい空気にもうまく作用していたと思う。宙ぶらりんで終わるべきテーマに則している
『ザ・コントラクター』、コーヒーの輸出入もやってて拠点には創業者の菜園があったりするPMC、非常にいいディテールだった。決して荒くれ者たちの集団というだけでない、なんなら魅力的ですらあるコミュニティ。彼らも国家のコントラクター、請負業者として嫌な仕事を押し付けられる存在だけど、更にその組織も誰かを「請負業者」として虐げているという構造があり、そこで働く人々は助け合えるはずが上層部のちょっとした意志変更で殺し合いをせざるを得なくなる。上下関係だけじゃなく横の関係も描いているところがえらい。
『ザ・コントラクター』、罪を重ねていく主人公の姿は非常に痛切で、これはもうまもとな人生に戻ってくることはできないだろう、と思わせる(彼を恨むある女性の心の底からの呪いのセリフがしばらく耳に残る)。ラストは表面だけみればそういう印象に反するのだけど、たぶん、そうじゃないんじゃないかな、とは思った
『ザ・コントラクター』、クリス・パインを地獄に引き込んでしまうベン・フォスターは当然いいのですが、セーフハウス管理人の男を演じるエディ・マーサンもよかった。主人公を助ける善人ではあるのだけど、もう絶対に日常には戻れない欠けてしまった人間であるという恐ろしさ、そしてそれをもてあましていない感じ(内なる獣を知り尽くして諦めている感じ)がよかった、ていうか怖えわ、という。ヒンドゥークシュ山脈の挿話とか…。
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