“『黒い皮膚・白い仮面』でファノンは、白人優位の価値観が教育を通して子どもたちのなかに染み込んでゆく様を、「結晶化」と表現している。「アンティル諸島では、学校で《われらが祖先ゴール人》[ガリア人のこと]を絶えず反復させられる黒人の子供は探検家や文明をもたらす教化者、野蛮人に真理を、純白の真理をもたらす白人に自己を同一視する。自己同一視があるのだ。つまり黒人の子供は主観的に白人の態度をとるのだ。[……]。こうしてアンティル諸島の子供のうちには、本質的に白人のものである、ある態度、物の見方、考え方が次第に形成され結晶化するのが見られる[*41]」。要するに、英語圏以外のカリブ海の島々においても、教育は同様に帝国主義的なイデオロギー装置として利用されていた。そしてかれらにとっての「教えと学びの空間」もまた、自己否定の場であると同時に、西洋支配者たちの優れた「態度、物の見方、考え方」を模倣し内面化するための場となっていたのである。”
“彼(ラミング)はその社会を、「一方に、読み書き能力がない、そうでないとしても貧しかったり疲れて本を読むことができなかったりして文学とは無縁の大衆、そしてもう一方に、地元の土地で育ったものや作られたものであれば嘲笑うという特定の目的のために教育を受けた植民地中産階級」という雰囲気に支配された社会と表現している[*42]。こうしてカリブ海における1930–40年代の労働運動から、大衆は排除されていった。”
第7回 植民地の教育と記憶 未来のために振り返る力|君たちの記念碑はどこにある?――カリブ海の〈記憶の詩学〉|中村達
https://note.com/kashiwashobho/n/nf1862a891888