『賢人と奴隷とバカ』
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1107&ct=4
“いまある状態がほとんど動かせないとなれば、その稀少な資源のなかで、どう優先順位をつけるか、危機に瀕した生にどう順番をつけるかに発想がなるのは当然である。その文脈にあるのは、このいまある世界以外の世界は不可能であるという揺るがすことのできない前提と、厳格なそのフレームの内部で「最善」をもとめる発想である。ただし、このたがの外れた現代日本は、そのような「常識的レベル」にとどまってはいない。たとえば医療現場の人間は、もちろんその都度の状況のなかでモラルや義務として「最善」をもとめるしかないだろうが、好んでこのような思考実験への嗜好性をみせる現在の日本の空気には、なんとしても生に序列をつけたいというサディスティックな欲求がまず透けてみえる。ここにもまた倒錯がある。”
19.すべてのオメラスから歩み去る人びとへ──反平等の時代と外部への想像力
#読書
『賢人と奴隷とバカ』
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1107&ct=4
“こうした序列好みの言説には、やむにやまれぬという切迫した態度などない。そこにあるのは、それを口実に序列をつけたい、生に線引きをしたいという欲求である。稀少性があるから序列が生まれるのではない。序列をつけるために稀少性がなければならないのだ。つまり、稀少性はあえて稀少性のままでなければならないし、それがないところには人工的に稀少性を構築しなければならない。それがなければ、賢いふりをしたまま差別することができないからだ。”
19.すべてのオメラスから歩み去る人びとへ──反平等の時代と外部への想像力
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