建国と植民地化、入植
“「満拓公社のやったことってのは、そりゃ実に非道なやり方だったですよ。田畑の買い占め、そして強制立ち退きですな」。
この類いの証言は枚挙にいとまがない。満州に渡った滋賀県満州報国農場の事例では、農場長だった辻清が戦後、強制買収についてこう語っている。「原住民の[中略]泣き喚いて、土間に土下座して頼む姿は、まことに哀れであった」。「満人も鮮人も、私を私を恨んでいるだろう。私の顔をよく覚えているだろう......逃げる途中で、もし、その人たちに捕まったら、それこそ、寄ってたかって私に恨みを晴らすだろう」。凄絶な引き上げの背景にあったのは、日本人による満州国建国と入植、そのための現地住民の土地の強制買収と立ち退き、そしてそれを可能にした、日本の圧倒的な軍事力の優位であった。”
#読書
6章 事件の背景
歴史の屑拾い 藤原辰史https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000369686