(略)“「民間人によるデマ、民間人による虐殺」というイメージは、軍隊・警察による殺害が犠牲者数の調査に含まれず、死体が隠滅され、裁判で裁かれないという事後処理が深く関係している。
しかし、人が生きてきた痕跡、人を殺した痕跡を、そのように簡単に消すことはできない。虐殺の現場から何とかして逃げ出し、生存した朝鮮人が、いたことは先に述べたとおりである。
その人びとが戦後になって語った証言によって、歴史が紡ぎなおされていった。現場となった地域住民の目撃証言・加害証言も長い時間をかけて収集され、編纂された。かつて埋められた犠牲者の遺骨が発掘された地域もある。地域の人びとによる追悼集会・慰霊祭も毎年開かれている。新聞の投書、手記や日誌の断片の数々を丹念に拾い集めてまとめた書籍もある。本書で紹介した史料は、そうした成果のごく一部である。”
『民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代』
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2020/08/102605.html