“おそらく、より無名ではあるが、おなじようにわが土、わが海、わが川から立ち退きをこばむ人びとの長い列がある。日本の近代史にはいま現在にいたるまで、この「しがみつく者たち」の長い列──悲嘆にくれ、怒りや憎しみにかられ、あるいはあきらめ、途方にくれるその姿が埋め込まれている。そして、すでに土も海も川も喪失し、賃労働者へと変態(その変態が正規、非正規、失業の前提である)を遂げたわたしたち都市市民には、その「しがみつき
」はおのれの損得もわからぬ愚直な頑迷牢固とみなされ、いまにいたるまで嘲笑されてきた。”
#読書
08.「しがみつく者たち」に──水俣・足尾銅山・福島から
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1107&ct=8
“3.11以降、あらためておもい知ることになったこの長い既視感から浮上してくるのは、わたしたちの生に対して主導権を握っている者たちのわたしたちの生への恐ろしいほどの全般的な無関心であり、それを白日のもとにさらけだすしばしば稚拙である嘘や隠蔽を重ねてもひるまない無神経さと残酷さである。この心性とそれをやむことなく生産するこの社会の仕組みは、田中正造を幾度も怒りと嘆きに七転八倒させたものと本質的に変わらない。ここからすれば、生の権力とは、生の政治とは、なんと人を誤った道にみちびいてしまう概念であることか。”
#読書
08.「しがみつく者たち」に──水俣・足尾銅山・福島から
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1107&ct=8