「国籍」をめぐる植民地主義と現代の課題──著者が語る朝鮮籍をめぐる問い・後編鄭栄桓
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 “その際に見落としてはいけないもう一つの問題は、家父長制とジェンダーの問題です。戦後になって、朝鮮人を様々な権利から排除していく際に、戸籍という手段を用いた結果、朝鮮人男性と法律婚をした日本人女性も「朝鮮人」として扱われて同じく権利から排除されることになった。平和条約発効の際に国籍喪失をする「朝鮮人」にも、こうした日本人女性が含まれた。”

 “もし植民地時代、朝鮮戸籍に入った日本人男性が多く存在したならば、おそらく日本政府はこうした措置は採っていなかったでしょう。戸籍によって日本国籍喪失のラインを引いてしまうと、日本人男性は外国人になってしまうわけですよね。統治する側にとってそれは許容できなかったのではないか。逆に、朝鮮人の「家」に入った日本人女性が、「国」の構成員から除外されることは特に問題視されなかった。そういう意味では、レイシズムと家父長制の両者が非常に重要です。”

 “大日本帝国、そしてそれを継承した日本国にとって、国籍の帰属は戸籍、そして「家」という制度の強い影響を受けたのです。”

なぜ「歴史のなかの朝鮮籍」なのか
──著者が語る朝鮮籍をめぐる問い・前編鄭栄桓ibunsha.co.jp/contents/chong_y

 “(前略)当時の在日朝鮮人団体からは、「外国人として認めてほしい」という要望が強かった。日本政府は朝鮮人が「独立国民」であることを認めず、平和条約発効までは国籍は変動しない、との解釈を採っていたからです。つまり日本は敗戦したが、朝鮮人は依然として日本の「帝国臣民」だというわけです。他方で参政権を停止し、外登令の適用対象にすることで権利だけは奪っていく。朝鮮人団体はこれに抗議したわけです。外国人登録をさせておきながら、なぜ、解放された民族として扱わないのか、と。他方で、在留権の問題に関しては、「外国人だからいつでも強制送還していい」というような認識には全く立っていません。植民地時代に在日朝鮮人が形成された歴史的責任から、在日朝鮮人が自由に日本に居住する権利を認めてほしい、だから解放民族として扱い日本の臣民とは見なさないでほしい、そして同時に、日本に自由に居住する権利を与えてほしいというのが朝鮮人団体側の要望だったのです。”

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なぜ「歴史のなかの朝鮮籍」なのか
──著者が語る朝鮮籍をめぐる問い・前編鄭栄桓
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 “しかし、GHQや日本政府の対応は真逆で、彼らを引き続き日本の管理下に置きたかった。だから、国籍は離脱していないので変動しないという立場を取ります。つまり、外国人登録令に違反したり、許可なく朝鮮半島から渡航したりした人は、拘束し、場合によっては強制送還したいわけです。”

 “そういう意味では、外国人登録令とは、大日本帝国崩壊後も朝鮮人に対して植民地主義的な支配を続けたいという要望の下に、朝鮮人の法的地位を日本の管理下に置き続けようという法令であったと言えます。また、しばしば指摘されるように、日本国憲法施行の前の日に、天皇の最後の勅令として施行されたという事実は、極めて象徴的な意味を持っていると思います。”

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