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晴着を持たないひとりの女が外から帰り
すり切れた畳の部屋で
「ついこの間
一杯の塩もない新年があった」
と呟きながら
餅焼網で餅を焼けば
白い餅よりもたしかな手ざわりで
喜びはかなしみに
愛はいかりに、裏返され。

しかも家族はめでたくて
地続きに住む雲上人の御慶事に
目を輝かせているばかり。

日、とは抽象。
御子、は尊称。

そこぬけに善意の御方とうかがえば
善とは何でありましょう。

あなたはどなたでいらっしゃいますか。

『愚息の国』石垣りん

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