憲法前文の勢いについて 藤原辰史
 
 “いつもあなたは威張っていたけれど、ずっと内心びくびくしていたことをわたしは知っています。心は完全に振り切れました。あまりにもたくさんの人が、焼き焦げ、熱に溶け、餓えて死に、自殺を強要され、船とともに海の底に沈み、人々を撃ち殺し、手足を引きちぎり、毒ガスで呼吸を止めました。我が子を水につけて殺し、家族と毒薬を飲み、手榴弾を胸元で爆発させ、海に身を投げました。この期に及んで、わたしは悪くなかった、時代が悪かった、しょうがなかったんだ、なんて、あなたは所詮その程度の人だった。理想が簡単に実現しないなんて百も承知です。でも、わたしの荒みきった暗い心も、放射能に浸された子どもたちも、絨毯爆撃された廃墟も、もう、理想以外にすがるものはない。あなたを地中の闇に沈め、二度と這い上がらないようにしてあげましょう......こんな怒りで体の震えが止まらず、上ずっているような声を私は全文の行間に何度も聞いてきた。”

“「あなた」は必然的に自分をも名指す。だから、全文には人類の負い目もまたしみ込んでいる。自分たちが犯してしまった罪に対する身の縮まるような恥をわたしは感じることもある。”

私にとっての憲法iwanami.co.jp/book/b285371.htm

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