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亡国のスパイ E1(つづき) 

僕はいつの間にか涙を流していた。
彼の足元に、彼が愛用していた鞄があるのに気づいたからだ。
そして想像した通り、彼はその歌を最後まで歌い終えると、そのまま鞄を手に取って、迷うことなく、僕に何か合図の一つ残すでもなく、まっすぐステージを降りていった。

僕はもちろんわかっていた。
僕はもう二度と、彼に会うことはないのだ。

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