20230515「天使が隣で眠る夜」1
初めて会ったのは、ガラの悪い界隈のぱっとしないカフェでだった。
俺はいつもそこで昼飯を食うことにしていて、ミッキーはたまたまなにかの事件の聞き込みに来ていた。
数日後、ミッキーはまたカフェに現れて言った。
「あんたのおかげであの女を見つけたよ」
俺は別に記憶力がいいわけじゃないけど、俺がその数日前に見聞きしたことが、何かの手掛かりになったらしい。
詳しいことを聞きたかったわけじゃなかったのに、ミッキーは昼飯をおごると言って、そのまま一部始終を俺に話して聞かせた。
「そんな話まで俺にしていいのか?」
俺は思わずそう言ったけど、あいつは笑って取り合わなかった。
そもそも、仕事と自分の生活の境目がないような男だった。仕事熱心というよりは、他にやることがなかったんだろう。
刑事らしいところなんか、そもそもなかった。
ものすごくだらしなく、仕事中でも酔っぱらっていることもあって、機嫌がいいと歌ったり踊りだしたりする、刑事というよりはチンピラみたいな男だった。
それでも俺たちがよく会うようになったのは、やつにしてみれば俺は、「「手伝え」と言えば文句をたれながらも何かと世話を焼いてくる都合のいいおっさん」だったからに違いない。