20230104
例えばみんな携帯で写真を撮るだろ? 恋人の寝顔とか、日向ぼっこしている飼い猫の姿とかを。
そういう一つ一つを、言葉でこねくりまわしてしまうのが僕だ。
画家がスケッチするみたいに? そう、たぶんそれに近い。
「瞬間」をどう言葉で描写できるのか、それが他人とは違う、より美しく、個性的で、熟孝された一編の詩のような完成されたなにかになれたらいいのにと思いながら、僕はあがく。
ちょっと紅葉した並木の美しさだとか、偶然通りかかった、カップルが別れ話をしていた横顔だとか、僕を動かしたなにげない一瞬を。
もちろんその試みは大概は、そこらじゅうで無限に撮られているスナップの一枚みたいな、ありきたりなものに過ぎない。
それでも僕は口に出さず、紙に書かず、ただちらりと脳裏をよぎり、時に美しくこの上もないように思えた一瞬を思う。
大概は僕自信の目にすら凡庸でありきたりなものにすぎない言葉を、記憶の中で選び、編み、積み重ねていかずにおれないのだ。
いつかそれは何かのひょうしに僕のなかから飛び出し、ふわりと飛んでいき、そして誰かの目の端をよぎって、その人の足をとめ、ひとときの微笑みかあるいは涙を、呼ぶのではないかと夢見ずにいられないから。