アンゲラ・シャーネレク『ミュージック』観た。まず、固定カメラのライブ配信じみた映像の連なりを「映画」と呼ぶことに抵抗したい気持ちが強い。極端なロングショットも演出的な効果をあげてるとは思えず退屈さが募る。
ただでさえ分かりづらい不条理劇のような話をことさら混乱するように語ってどうするのか。「説明を排した」と書けば聞こえはいいが「説明を放棄した」だけとしか思えない場面が多い。演出家の勿体ぶった態度を「神話的」と評する鑑賞者の感性にも疑問。
映像作品における台詞やモノローグの重要性から目を逸らしておきながら音楽には無批判な信頼を寄せる。ほぼ全編に渡って迂遠な演出を誇示しながら泣く・叫ぶなどの感情の発露だけはベタに撮る。演出家の分裂したスタンスが厳しい。いかがなものか。
全体としては頭でっかちでいけ好かない印象の残る作品だが、同時に擁護したくなるような細部もそれなりに持ち合わせておりなかなか評価に困る作品だった。機会があったら『家にはいたけれど』も観たうえで再鑑賞に挑みたい。