金子修介『ゴールド・ボーイ』観た。最高。『夜明けのすべて』『カラオケ行こ!』と並ぶ今年のベスト候補。
「(スラッシャーではない)殺人鬼映画」として秀逸すぎる。岡田将生の東出昌大オルタナティブっぷりも絶好調。邦画版『CUBE』で岡田がパラノイアに陥る姿を見て笑えた人間は間違いなく楽しめるし、なんなら『ドライブ・マイ・カー』の岡田が好きな人もイケると思う。
物語が始まる前からどうかしていた羽村仁成にクラクラする。あれだけのことをしておきながら星乃あんなへの気持ちに嘘はないという複雑怪奇すぎる精神構造が心の底から素晴らしい。羽村の星乃に対する気持ちが本物だからこそエモーショナルなシーンに説得力が生まれるし、エモーショナルなシーンに説得力があるからこそ痛ましさがより切実なものとなる。
羽村の「日記」を読んだうえで惨劇の寸前に振り返ることのできた星乃と、息子の異常性を知っても打ちひしがれるだけで振り返ることのできない母親の対比。どうしてあのような「怪物」たちが生まれたのかを一切説明しない潔さ。あえて「深く」描かないことの聡明さ。薄っぺらさが奥行きにつながる/つながってしまう逆説性と現代性。
これはもう「平成ガメラ三部作」以降の金子修介の代表作と言ってもいいのでは。同じく沖縄を舞台にした初期北野武の傑作『3-4X10月』『ソナチネ』で撮影を担当した柳島克己のキャメラが捉える美しい風景とともに、凄惨で儚いひと夏の物語が記憶に深く刻まれる。