デヴィッド・ゴードン・グリーン『ハロウィン THE END』の公開が近いので、始祖・カーペンター版『ハロウィン』を百億年ぶり(オタク特有の過剰な表現)くらいに観直す。
少年マイケルが姉を殺害する冒頭からしてヤバいオーラ全開で最高なんだけど、15年後に青年マイケルが精神病院から脱走→ハドンフィールドに戻ってローリーをロックオン→白昼のストーキングで不穏な空気を醸成→高まった内圧が一気に弾けるハロウィンの夜の惨劇、の流れがホラー映画として完璧過ぎて参った。カーペンターの映画巧人(えいがうまんちゅ)としての才覚が遺憾なく発揮されており笑顔になれる。
稀代のホラーアイコン、マイケル・マイヤーズのグルーミーな存在感も素晴らしい。実体を持つ「人間」の殺人鬼でありながら、どことなくJホラー的な意味での「幽霊」っぽさを漂わせ(シーツお化け姿も披露してくれる)最終的に子供たちが語る「都市伝説の怪人・ブギーマン」と同化し、遍在する「恐怖」そのものと化す。
グリーン版の二作目「KILLS」(来月に公開を控えた「THE END」はこれの続編)でもマイケルは徐々に概念みたくなってくけど、俺はこういうノリのホラー映画が好き過ぎる。世の中には具象と抽象の間に横たわる不気味な中間状態からしか摂取できない特殊な栄養があるんですよ。
二階の自室からローリーが庭に佇むマイケルを目撃し、マイケルに見つめ返されるシークエンスが絶品。まるで高橋洋の映画を観ているようだった。ローリーが驚きの表情を見せた次のショットで、マイケルの姿が煙のように消えてるのもいい。強風でバタバタとたなびく洗濯物はさながら黒沢清。どこを切っても不穏さしかない劇中屈指の名シーン。