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それでは皆さん、本日も診断を回していただきます。

SCENE7 ⑥ 

沈黙に耐えられず発言したのは、春夏冬レンだった。

「大丈夫だよみんな、麻袋太郎君は優しい人なんだ。だって……あれ?」

話し始めたかと思うと、そう言ってレンは何かを考えこんでしまった。
そしてしばらくそうした後、悲しそうな顔を皆に向けた。

「みんな…僕、思い出しました。なんで僕たちが、ここにいるのか」

SCENE7 END

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SCENE7 ⑤ 

先日、怪異の姿となった三人に会ったことを一ノ瀬碧斗が皆に報告すると、西園寺サラと亘貴も同様に、隙間女のようになった日廻夏八と姦姦蛇螺のようになった阿墨修二に会ったという事実が共有された。

それらが本当に本人たちであったのかはわからない。
だがなんとなく、碧斗は本人たちであるという予感を持っていた。

「それから、その…阿墨さんが俺に近づいてきたとき、麻袋太郎が阿墨さんを攻撃したんだ」
「そこも同じですの!?サラの時もそんな行動をされていましたわ」

麻袋太郎は、サラに対しては好意的に接していたことにここにいる者達は気づいていた。
だから庇ったのだろうか?
だが、貴に対してそのような態度でいたことはなかった。

「麻袋太郎ってさ、なんで今までの人たちは助けなかったんだろ」

麻袋太郎が遠吠えをすると遺体は消えてしまう。
一連の惨劇に麻袋太郎が関与していることは、ここにいる者達にも想像がついていた。
麻袋太郎がサラ、貴、碧斗の三人を守ろうとした可能性は確かにあるが、命を落とした五人のことを思うと信じ切ることはできない。

考えた時に改めて五人の死を思い返し、何とも言えない気持ちになった。

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SCENE7 ④ 

ぴょこんと飛び出してきたのは、小柄であったシャーロット・ワトソンをさらに小さくしたような姿の小人であった。
一見するとその姿には恐ろしさはない。
だが、今の碧斗にはそんな愛らしい姿さえも安心できるものではなかった。
しかし、悪意は感じられない。

碧斗に向かってジャンプし、服にぶら下がって遊んでいる、ジャックフロストとなったシャーロットを見ていると、またもや麻袋太郎が駆けつける。

途端、シャーロットの肩が跳ねたかと思うと布団の隙間から伸びた腕がシャーロットを掴み、引きずり込んだきり姿を消していた。

「もう!!キリがないワウ~~!!」

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SCENE7 ② 

手に深々と刺さった鎌や、首に開いた穴を見て碧斗は恐ろしくなり、立つことができなかった。
彼を見ていると碧斗は何故だか、この世界から消えてしまいたくなった来ていた。
このまま殺されるかもしれない恐怖におびえながら暮らすよりも、いっそここで自害してしまえば楽なのではないか。
帰ることに意味など、あるのだろうか。

そんな考えが頭をよぎった時に出てきたのが、麻袋太郎だったのだ。
「シッシッ、お前は襲っちゃダメワウ!」

麻袋太郎に促され、天親のようなそれは、忌まわしそうな目をしながら、背を向けて歩き出した。

「いやほんと勘弁だって……」
立て続けに怪異になった元仲間達に遭遇したこと。
また、二人も怪異による犠牲になったことにより『次は自分なのではないか』という恐怖から、碧斗は疲弊してきていた。

今はあまり考え事をしたくない碧斗は、少し睡眠を取ろうと布団を捲る。
そこからひんやりとした冷気を感じた。

「…ん?」

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SCENE7 ① 

「ワウウ!お前らしつこいワウ!なんでそうやって出てくるワウ!?」

尻もちをつく一ノ瀬碧斗の前に現れたのは、花遊天親の面影のある大きな男であった。

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更新が遅れ、申し訳ありませんでした!
只今より、本日の本編更新を開始致します。

???⑭ 

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昨夜未明、△〇駅入り口にて鴉羽雨之助さん(34)が遺体となって発見されました。
遺体に外傷は見つかりませんでした。
警察は事件と自殺の可能性を追って捜査を進めています。
被害者は先月から行方不明となっていました。
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昨夜未明、△×駅入り口にてシャーロット・ワトソンちゃん(6)が遺体となって発見されました。
検死の結果、遺体は凍死だと判明しております。
警察は事件の可能性を追って捜査を進めています。
被害者は先月から行方不明となっていました。
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鴉羽雨之助 死亡END
シャーロット・ワトソン 死亡END

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???⑬ 

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翌日、部屋にシャーロットがいないことに気づいた者達が探し回っていると、ホテルのロビーで信じられない光景を見ることとなった。
一面雪景色。その中で、巨大な氷の中に閉じ込められたシャーロット・ワトソンの姿であった。

麻袋太郎が駆けつけそれを確認すると、ニコリと笑い遠吠えをした。

途端、これまでの様に一面の雪ごとシャーロットの遺体は姿を消した。

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???⑪ 

「やめて、なんでこんなことするのよ!私たちが何をしたっていうの?」
最後の抵抗だった。
あまりの寒さにシャーロットの足はもう動かなくなっていた。
恐怖と寒さに歯をがちがちと鳴らしながら、近づいてくるジャックフロストに必死に訴えかけることしかできなかったのだ。

「嫌よ…まだ、死にたくないわ。お願い……」

震える声でそう訴えかけるも、ジャックフロストはニコリと笑うと----

シャーロット・ワトソンを凍結させた。

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???⑩ 

[夜]

どこからか笑い声が聞こえる。
寒い。
目を覚ましたシャーロット・ワトソンは酷い寒さに震えていた。今まで、この場所でここまでの寒さを感じたことはなかった。
そして目の前には、白い小人がいた。

シャーロットの服の裾をクイクイと引っ張るそれに、シャーロットは恐怖を覚えた。
誰も欠けていなかった頃であれば、楽しく話しかけられただろう。
夢の中のように、遊んでいたかもしれない。
だが、夢の中でこの怪異が自分や友達に酷いことをしていたのも見ていた。

無条件に楽しく遊ぶことのできる相手では、無くなっていた。
そんな思いからシャーロットが俯くと、その怪異は気を悪くしたようでシャーロットを恐ろしい顔で睨みつけた。

怖い、逃げたい。
このままではみんなを巻き添えにしてしまうかもしれない。

そんな、様々な思いが入り交じり、シャーロットは走り出していた。
雨之助の顔が浮かぶが、頼れる彼はもういない。
しかし涙が浮かんだその時、涙が冷たくなるのを感じた。
凍っている。
逃げられてなどいなかった。

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???⑧ 

そうだ。あれは、雨之助の表情ではなかったのだ。
麻袋太郎が吼える中、鴉羽雨之助の遺体は消え去ってしまった。

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「…アメノスケ」

幼いシャーロットにも、状況が理解できてしまった。
立て続けに消えてしまった三人はいなくなってしまったのかもしれないと思い込もうとしていた。
しかし、冷たくなった鴉羽雨之助の姿を見た時に、現実を受け入れるしかなくなった。

「……もう、苦しまないでね」
シャーロットの記憶にこびりついた日廻と阿墨の悲鳴。
少しだけ見えた、暴れる天親の姿。
そして…静かに息を引き取っていた雨之助。

もう誰も苦しむことが無いよう、安らかに眠れるよう、祈っていた。
弔いの気持ちを込め折った折り紙の花を、そっと雨之助のベッドに置いた。

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???⑥ 

貴とサラに連れられて雨之助のベッドに行くと、冷たくなった雨之助がいつものように寝ていた。
しかし、もう起きることはない。
二人が伝えたかったのはこれだったのだ。
なかなか起きない雨之助のことが気になり起こそうと揺すぶった際に体が冷たいことに気づき、もう生きていないことを確認したという。

では、シャーロットと碧斗が会っていたあの鴉羽雨之助は何者だったのだろうか?
そういえば、ジャック・オー・ランタンは嘘つきな怪異だという。
もし、彼も怪異となってしまっていたのだとしたら…。
いや、シャーロットはそれを確信していた。

何故ならシャーロットに向けていた先ほどの雨之助の顔は、いつもの優しい笑顔ではなく……

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???④ 

雨之助の名前を聞いたサラは驚いたような顔をした後、シャーロットを優しく抱きしめた。
「もう、知っていらしたのですね…サラはまた、間に合いませんでしたわ」

サラの言っていることがシャーロットと碧斗にはよくわからなかった。
間に合わない?

「何言ってるの?雨之助お兄さんはここにいるけどどうしたの?」
「え?いるとは…どこにでしょう?」
「いやだから、ここに…」

碧斗が指さす先には誰もいなかった。

「…いるわけないだろ、だって鴉羽さんは」

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