ジェイク・セレシンは失恋した。それも十年来思い続けてようやく結ばれた恋人と過ごす三回目の夜に！せめてもう少し夢を見せてくれたっていいじゃないか。十年だ、十年俺はあの雄鶏のことを思ってきたっていうのに。アイツは泣きながら別れてくれって言うんだ。こんなことなら怪しむべきだった。アイツがボトムをやりたいって言い出した時にその理由を問い詰めておけば良かった。失恋の理由は簡単だ。「初恋の人が忘れられない」というアイツの告白のせい。ジェイクのことが好き、でも、マーヴのこと、俺、ずっと好きで、あの人が初恋で、それをお前に抱かれて思い出しちゃった。ごめん、こんな不誠実な人間で、ほんとうごめん。だからもう、別れよう、お前のことこれ以上傷つけたくない、お前にこれ以上嫌われたくない、なんて。
子供のようにしゃっくりを上げて泣き腫らしている自称不誠実な恋人を見て「お前は好きな奴がいるのに別の男と付き合おうとするサイテー野郎だ、地獄に堕ちろ」などと言ってやることはできなかった。天下のハングマン様がどうしたんだって話だが仕方がない。どうしたって俺はこいつのことが好きだった。俺のために泣いているルースターを嫌いになんてなれなかった