今年もまた、明年のNHK大河ドラマ便乗本が数多くリリースされる時期と相なった。
しかし題材の特殊性(江戸の遊廓・本屋・浮世絵がメイン)もあって、その多くは文学や美術史サイドからの執筆となっている。実際にも、ドラマ制作の考証部門に文学研究者たちが入っている。
いっぽうで歴史学研究はといえば、ずっと18世紀政治史研究すら低調なので、「動員」をかけられている様子は観察できない。雑誌の特集で本郷(和)さんが田沼政権に論及したり、戦国史をメインにしている某氏が新書を上梓する、といった具合であり、専門外からの発言には驚かされる。
どちらかといえば便乗しない近世史研究者のほうが多い、とも言えそうだ。ただ新吉原については、この分野の第一人者による著作が予定されており、それだけが救いとなろうか。

ついでに述べると、この動向に来年は田中優子も便乗して、江戸文藝を育んだ「遊廓文化」などを賞揚するのに違いあるまい。氏がこれまで上梓してきた著述や、今年の春に東京藝大で開催された「大吉原展」の内容(田中氏が学術顧問)に照らせば明らかである。

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