これはコリンズの変な夢に影響されたに違いない。
夢の中で俺は俺より背の高いコリンズの頭を引き寄せようと手を伸ばした。ところがちっとも届かない。コリンズが「ファリア!」と俺の名を呼んだその声が遠ざかる。成長期もとうに過ぎているだろうにさらに背が伸びている。5メートル、10メートル…あっという間に山よりも高くなった。だが俺は慌てやしない。目の前にはスピットファイア。俺はさっと乗り込んでエンジンをかける。どんなに遠く高く離れようとどこまでも飛んで追いかける。お前からも俺が見える場所まで、その声が聞こえる距離まで、どこまでもどこまでも飛んでいく。お前より高く舞い上がったらお前に向かって飛び降りるから、しっかり受け止めてくれ。そしたらお前にキスをして、ほらそこでハッピーエンドだ。
そこで目が覚めた。隣にはすやすや眠るコリンズがいる。その頬にキスをして、ぎゅっと抱きついて、やっぱり手の届く距離の方がいいなぁと思いながら目を閉じた。
『夢の中のあれも本気だから』
コリファリ
コリファリ小ネタ
氷砂糖のラム酒漬けを作ってるコリファリ。だいたいひと冬で使い切ってしまう。
ファリア(コリンズは紅茶かラム酒がわからん配分だな)
コリンズ(ファリアミルクティーにあんなに氷砂糖入れてるけど何で太んないの?)
ファリアさんが柔術の試合なんかしてたらコリンズ君ソワソワするし犬をけしかけて邪魔したいなんなら自分が邪魔したい…と思ってるだろうと先回りしてファリアさんは試合の日も場所も教えないんだけど2回に1回は会場でコリンズ君を見かける(コは隠れてるつもり)
ファリアが寝言で「夏のコリンズすまない、俺は冬のコリンズの方が好きなんだ」ってうなされてたけど俺は自分でも気がつかないうちに冬毛に生え変わってたりするのだろうか?
「お前熱があるだろう」
同期に飲みに誘われてる俺にファリアが言った。自覚はなかったがそう言われれば朝からふわふわする感じがあった。そうか、熱があったのかと気がついてしまうと体が不調を訴えだす。
「悪いな、また今度誘ってやってくれ」と同期に詫びを入れつつ俺を部屋まで送ってくれる。
ファリアは俺に着替えてベットに入ってろと言ってから部屋を出るとミルクティーと毛布を持って戻ってきた。俺の部屋は隙間風が入ってきて少し寒いことを知ってるからだろう。
「それを飲んだら、暑いと思っても毛布をかけてすぐに寝ろよ」と母親みたいに世話を焼く。
ここは素直に甘えておこうと、わかったよありがとうおやすみと言うつもりが口からするりと「おやすみのキスは?」と出てしまった。俺たちは気安く額や頭に軽くキスをすることがある。ファリアはどうかわからないが俺は少しの下心を込めてのスキンシップだ。近づいてきたファリアの唇が額に触れる。
いつもより長めで、しっとりとした感触が伝わってきた。リップ音は隣にまで聞こえたのではと錯覚するほどだった。そしてファリアはおやすみと言って部屋を出ていった。俺の熱をさらに上げさせる気なのかと問う暇もない。熱のある俺よりもファリアの唇の方がずっと熱かったと後々まで思うことになった。
『あなただけ欲しい』
犬好きと人から良く言われる。全くそれは本当なのだが、人嫌いとは言われないものだなぁと不思議だった。犬か人か選べと言われたら迷わず犬を選ぶのにだ。
昔から人に対する興味が薄かった。人嫌いなわけではないが執着が薄すぎて、せっかく好意を持ってくれた相手を失望させることがしばしばあった。恋愛方面が特に顕著で、もしかしたら恋愛対象が異性ではないのかと思った事もあったがそんなこともなく、もうこれはそう言うタチなのだと思うしかなかった。まぁ犬さえいれば良かったので寂しいと思う事もなかった。
そんな中で現れたのがコリンズだ。早くから自分に対して好意を隠さない男だった。きっとすぐに自分のこの薄情さを知られてがっかりさせるだろうと思った。犬のような可愛い男だったのでそれはちょっと残念だと思った。
それが全くの杞憂だと知るのに時間はかからず、いつの間にか自分が変えられてしまったことに驚くことになる。誰かを欲すると言うのはほんの少しの切なさとそれを上回る幸福感で満ちていた。それがたったひとりあの男にだけ捧げられて、俺は本当に幸せだ。
「見つめるのが怖い」
鏡ごしにファリアの姿を見つめる。そこに映る自分の顔はなるだけ目に入れない。恋に落ちた男の顔のなんとみっともないことか!
こんな表情で、こんな目つきでファリアを見ていたのかと知ってぞっとした。そんな自分を知ってからは普段は努めて普通を意識するようになった。ただの可愛い相棒を演じるのは簡単だ。大丈夫、大丈夫と心の中で繰り返す。
それなのに、今、鏡ごしのファリアを見つめるのが怖い。
そっと盗み見ていたつもりなのに、必ずと言っていいほどファリアと視線が合うのだ。
鏡ごしに俺を見るファリアに、全て見透かされているような気がしてしまう。そして何より、自分と同じものを彼の目に期待してしまう。見つめるのは怖い。でも見つめずにいることも出来ない。
鏡ごしに絡み合う視線の答え合わせは、まだもう少し先。
独り占めタイム(🍋🍊)
仕事の後はたいてい血まみれ泥まみれだ。血はほとんど相手のものだし服に着くと落とすのが大変だからビニール合羽やらなんやらで対策はしているが「少々マシになった」程度の効果しかないのでレモンには毎回文句を言われるが、そのレモンにしたって俺と目糞鼻くそ程度の違いしかない汚れっぷりである(だがレモンが単独で仕事を受けた時は綺麗なままなんだがどういうことだ?)
まぁそんなことはどうでも良い前置きってやつで、要は二人でシャワーを浴びて血の匂いも消してさっぱりしてとっととベッドに潜り込むのがルーティンってやつだ。変な想像はするな。たった一人の兄弟に抱きついてこの時ばかりは子供の頃みたいにお互いを独り占めして、幸せな眠りにつきたいだけだ。「最近太った気がするなぁ。ちょっとはダイエットするかな」レモンのそんな軽口に「馬鹿野郎、大事なレモンが1オンスでも減るのはゆるさねぇ!」と、どこかで聞いた台詞を吐いたつもりだが実際はむにゃむにゃとしか発してなかったようで、レモンの「おやすみ兄弟」という言葉と頭を撫でる手のひらの暖かさを最後に柔らかい闇の中に落ちていった。
fkmt作品(南赤南)/ジパング(草松)/洋画(コリファリ/🍋🍊) 最近はSD(714)多め
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