『あなただけ欲しい』
犬好きと人から良く言われる。全くそれは本当なのだが、人嫌いとは言われないものだなぁと不思議だった。犬か人か選べと言われたら迷わず犬を選ぶのにだ。
昔から人に対する興味が薄かった。人嫌いなわけではないが執着が薄すぎて、せっかく好意を持ってくれた相手を失望させることがしばしばあった。恋愛方面が特に顕著で、もしかしたら恋愛対象が異性ではないのかと思った事もあったがそんなこともなく、もうこれはそう言うタチなのだと思うしかなかった。まぁ犬さえいれば良かったので寂しいと思う事もなかった。
そんな中で現れたのがコリンズだ。早くから自分に対して好意を隠さない男だった。きっとすぐに自分のこの薄情さを知られてがっかりさせるだろうと思った。犬のような可愛い男だったのでそれはちょっと残念だと思った。
それが全くの杞憂だと知るのに時間はかからず、いつの間にか自分が変えられてしまったことに驚くことになる。誰かを欲すると言うのはほんの少しの切なさとそれを上回る幸福感で満ちていた。それがたったひとりあの男にだけ捧げられて、俺は本当に幸せだ。