よねと涼子(よね涼よね)二次創作2
「いいえ、まさか。……逆光の中を真っ直ぐに進む姿が、あなたの怒りが、いつも美しかった。真っ白な顔色をして、涙をたたえた瞳が遠くを見ているようで」
涼子はおもてを伏せ、いつものように優雅に唇の端を持ち上げる。それこそ万人が認めるような美しいやり方で。
「わたくしも……母も、舞台から飛び降りて進む勇気を持てなかった。あなたのように、強く、美しくありたかった」
唇がわななき、声が震えた。それでも涼子の瞳から水滴がこぼれ落ちることはなかった。
よねの記憶にある限り、この数年間で涼子の涙を見たことはほぼない。
それが華族の誇りだというのなら、そんなものはクソ喰らえだとよねは思う。散々「メソメソと弱音を吐いて何が変わる」と吐き捨ててきた言葉がよねの元へと跳ね返ってくる。
「ですから、よねさんの美しい怒りが、わたくしのために向けられてうれしく思いますわ」
今度こそ涼子はよねを真っ直ぐに見据えて言葉を紡いだ。「それで充分……」目を細め微笑もうとした涼子の手首をよねが咄嗟に掴んだ。
よねと涼子(よね涼よね)二次創作3
いつもは撫でつけられた髪がよねの片頬にかかっている。それは涼子に法廷劇でのことを、共亜事件の判決のことを思い出させた。
掴まれた逆の手で、そっと、できる限り優しく穏やかによねの耳に髪をかける。
「本当にきれい。透き通った宝石のよう」
宝石なんてものを間近で目にしたことはよねにはない。それでも涼子の声には、何かとても大切なものについて話すような響きがあった。そのことに腹を殴られたような衝撃を受け、よねは言葉を失い涼子を見つめた。
今度こそ涼子は微笑みを浮かべた。それはかつてよねを唯一労わってくれた幼い頃の姉の瞳にどこか似ていた。