【感想】”Better Living Through Algorithms” by Naomi Kritzer

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 友人が使い始めたという素晴らしい生活改善アプリ”Abelique”を、怪しい、使うまい、と思っていた主人公はしかし、同じくアプリを絶賛する会社の上司に半ば強制されていやいやながらそれをインストールする。初期設定のやたらと長いアンケートに答えているうちに、Abeliqueは画面にメッセージを表示する:あなたは職場でAbeliqueのインストールを強要されたかもしれませんが、このアプリの利用は個人的なもので、職場の利益のためではなくあなたのためになるものです。もしよければ、あなたの上司に提出するのに適した利用状況レポートを作成することもできます。あなたが従順な働き蜂にしか見えないように――これは普通のアプリではないと思いながらアプリを使い始めた主人公は、他のアプリ利用者からかかってくるモーニングコールで目覚め、アプリの指示に従って朝食を取り、アプリの指示に従ってTwitterを断ち、アプリの指示に従って、子ども時代に諦めてしまった絵の練習を始めるのだった。

 2024 Hugo Award Winner for Best Short Story。とても明るくて良い話だと思った。アプリの指示に従って行動していくと生活が向上していくのだが、胴元の意図がわからない、という謎の提示や、アプリがユーザーに指示して別のユーザーに電話をかけさせるという設定は、星新一「入会」を思い出させて少しミステリっぽさもあるのだが、本作の主眼はそこより少しだけ先を行っていると思う(というか星新一が慧眼すぎるということなのだが)。Abeliqueの正体は現実のこの世界の私たちよりも少し先というか、現時点の技術だとまだ実現しないよねと思えるけれど、まあそのうち出てきてもおかしくない、あるいは部分的にはこういうことも起こっているだろう、という絶妙な実感のラインを突いている。私たちの行動がアルゴリズムに誘導されることや、そのアルゴリズムもやがてハックされて堕していくということも、極めて自然に受け入れられる(インプレゾンビとかね)。SF的想像力を広げつつ、そうやって読者に「入って来やすい」話題を上手く使って、さらにこの軽妙で読みやすい文体で語られることで、最後の結末のポジティブさが輝く作品になっていると思う。

#Clarkesworld #English #NaomiKritzer

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