【感想】『せんねんまんねん』蜂本みさ

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 これすごいって思って、絶対すごいから絶対感想書こうって思ったけど、ページを開いたら何書いたら良いかわかんなくなっちゃったな。

 大阪SFアンソロジー連動作品ということで、舞台は大阪であり、全編が大阪弁、しかも”違う”大阪弁であるという、強いこだわりを持って書かれている。まずはその「言葉が大事にされている」というのが伝わってくるのが良くて、思わず頭の中で音声化して読んでしまう。音読したいし、朗読してもらいたいと思える。これは自分がかつて蜂本みささんの方言に関する文章をとても面白く読んだ経験があるからなおさら注目してしまったというところも多分にあって、でも、別にそういう情報がなくてもきっと着目していただろうとも思う。それくらい意識が向いている作品だと思う。

 親友と仲違いしてしまった小学生の女の子が、〈対話のラッパ〉にその悩みを吹き込む。すると思わぬ所から返事がある。アドバイスに従って親友と仲直りするが……、というこの作品のプロットや仕掛けは、自分にとっては特別に新しかったわけではない(作者もきっとそこを狙ってはいない)。けれど、とても効果的に切実な声が響いてくる作品だった。大阪という土地の文脈を随所に引き受けているところとか、色々工夫はあると思うけれど、やっぱり一番は言葉に対する意識だと思う。最初に書いた方言ももちろんそう。加えて全く違う角度でも、この作品からは言葉の力、その恐ろしさが垣間見えるようになっている。「言葉で誤魔化されている」登場人物とその背後に広がっているであろう社会が容易に想像できてしまうところが、延長線を逆に辿って現実の現在・我々に対する危機感に繋がってくる。

 多くの人に読まれて欲しいなと思った。

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