通信制高校をめぐる諸問題は、伊藤靖幸さんが「大阪における高校教育改革~定時制・通信制・単位制~」『大阪高法研ニュース』第120豪(1992年)で提起した「そもそも今の日本社会の中で定時制あるいは通信制の果たすべき役割は何なのか。勤労者の為の教育機関の理念にこだわりつづけるか、少人数となったことを奇禍として、何らかの事情で定時制の門をくぐらざるをえなかった生徒の「治療と回復の場」とするか、「全定同格」の理念にこだわるか、あるいは割り切って高卒資格付与機関と考えるか。」との問いに明確な答えが未だに出ていないことにも大きな原因がある。
高卒資格付与機関と割り切って考えるのと、「全定同一」の理念にこだわるのとでは、通信制高校に投入すべき資源量が異なる。現在の通信制高校は、在籍する生徒の需要が多種多様でありながら、「高卒資格付与機関」であることを前提とした少ない資源しか持ち合わせないことが無理を生じさせている。その結果、多くの生徒の需要には十分に応えられず、その結果、高校卒業を断念しなければならない生徒が多くなるのも道理である。
そう考えると、通信制高校に投入する資源量を全日制高校と同等以上に引き上げることが問題の解決策となるが、各自治体の理事者はどう考えるか。むずかしい。
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