標準的な運営をしている通信制高校を卒業するのは難しい。自学自習が基本で、疑問があってもすぐに教師に質問することはできない。また、学習活動全般において自己管理を徹底しなければならない。このようなことをこなせるのは、日本のすべての高校生の中でもそれほど多くない。
現実に、埼玉県立大宮中央高等学校の教員だった小林裕光氏は、Webに発表した論文「埼玉県の高等学校通信制課程における諸問題について」において、多くの生徒が1単位も修得できない現実を報告している。
そこに付け込んで、ごく一部の私立通信制高校が不適切な教育活動を行い、安易に卒業認定をしている問題はある。通信制高校への偏見のかなりの部分は、このような不適切な教育活動を行った学校を知った先入観からだろう。
とはいえ、通信制高校の現状は、制度創設時に文部省(当時)が示した理想とは大きく離れているのは事実だ。当時の文部省は、通信制高校においては徹底した個別指導が中心であるとした。面接指導も数人程度のクラスで行うことが想定されていた。財源面などの課題を解消することができて、制度創設時の理想が実現していたとしたならば、現状の通信制高校よりは卒業へのハードルが低く、しかも良質な教育を提供できていただろう。たらればを言っても詮無いことだが。

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