破瓜の痛みを知りたい清光♀の則清……
そろそろ潮時かな、とも思う。
かけた言葉に振り返って、値踏みするような目で頭から爪先まで。それでgoサインが出ることが、少し、ほんの少しだけど減り始めていた。
焦りが、諦めに変わり始めていた。怖くなったのもある。経験して、それが期待外れであったなら。だったらもう、一生経験しないほうがいいんじゃないか。
今日で終わりにしよう。今日一番最初に声をかけてきた男が、自分の好みでなかったなら。愛だの生涯に一度だの重いことは綺麗さっぱり忘れて、気ままなオールドミスになってやる。
破瓜の痛みを知りたい清光♀の則清……
すんごいよかった。
ふかふかのベッドで昨夜の情事を思い起こして、清光は悩ましげな溜め息をついた。
ものすんごくよかった。
これまで試した誰よりも…。
だけどやっぱり、最後までを許すのは怖くて逃げてしまった。
そんな清光を、男は笑って許した。
今までの男たちとは違う反応だった。それだけで胸がきゅんとした。
この男の、愛がほしい。
布団の端を握りしめて、清光は決意した。
絶対にこの男をものにしてやる。
これまで培ってきたすべてでもって絡め取り、愛を勝ち取る。そうして自分は、最高の経験を手に入れるのだ。
静かに闘志を燃やす清光には全く気付かずに、「一大決心の結果」であるこの男――一文字則宗は、すやすやと子どものように眠るのだった。
破瓜の痛みを知りたい清光♀の則清……
「隣、いいかい」
そんなことをつらつらと考えていたものだから、反応が遅れた。
「ああ、うん」
などと簡単に許してしまって、内心慌てた。一大決心の結果を、心の準備もできずに見ることになってしまった。
そうして振り返った清光は、あんぐりと大きな口を開けた顔を晒すこととなった。
癖のある金糸の髪に薄青の瞳…物語の世界から抜け出てきたのかと思うほどの美貌。
明らかにひと回り以上は年上のその男は、間抜けな顔の清光をくつくつと笑った。