人柄が変わる程の症状が出る重度のPMSの女性と、自宅付近しか出歩けないパニック障害の男性を描いた映画。二人とも見た目はごく普通の人で、会社勤めもしている。だから他人から苦労がわからないし、自分にも自分の身体と心がわからない…という様子が描かれる。
でも二人が勤める会社の人たちがすごく優しくて、会社以外の場所との差が浮き彫りになっているのがよかった。会社以外の場所の人たちは友人や恋人なので、人間関係は会社の同僚よりも親しいと思うんですよね。親しい間柄の人よりも毎日一緒にすごす人たちがわかってくれている優しさが丁寧に描かれていた。
前のトゥートで友人関係にもならないと書いたのは、職場の同僚以上の関係性に発展しないように見えたという意図です。これもまた毎日を共にすごす同僚との関係を描いた結果かも。
芝居や演技って、再現力だと思う。かっこよくみせるものでもなく、感情的に訴えるものでもなく、そこに存在しないあらゆる現象をその場に再現する力。その力によって、見えなかったものを社会に可視化することができる。そして当事者に寄り添ったり、問題提起する力がある。演技によって再現された姿が、当事者から見て間違っていたとしても、間違いを指摘できれば無意味な物でもないと思う。上白石萌音さん演じるPMSの主人公を見てそう思った。