甘さ控えめが丁度いい
一つ、また一つと艶のあるチョコレート菓子が薄い唇の奥に消えていく。
跳ねる心臓を密かに押さえながら、ただその様子をじっと見つめていれば、赤い瞳が不思議そうに私を捉えた。
「どうしたの?」
薪を燃やす火のような穏やかな瞳が何となく見れなくて、視線を逸らしながら今一番知りたかった事を尋ねる。
「……味はどう?」
チョコレート菓子を渡した時は何も言わなかったけれど、聡い彼のことだ。それだけで、そのお菓子の作り主は誰か知れただろう。
「美味しいよ」
とろりと蜂蜜のような甘い声に、彼がどんな顔をしてるのかなんて見なくても分かる。むず痒くなって身動げば、ソファーが軋む音がして長い腕に捕らえられた。
「僕のために作ってくれたんだろう?」
「ち、がうわよ…皆が作れって言ったから…」
「それでも。嬉しいよ」
体を拘束する腕は優しくて、でも振りほどくことは出来ない力強さも感じる。頭上に降り注ぐ楽しそうな声は低く、大層心地良く耳に届いた。
「少し、苦くなったの。あんた甘いの好きだったじゃない」
砂糖の量を間違えたのだと伝えれば、ふうん、と軽く唸った彼は私の顎を掬い上げた。
そっと塞がれた唇が離れると、口に残るのはほろ苦い濃厚な味。やっぱり苦かったなと思う間もなく、甘く蕩けた唇に再び口を塞がれた。#1TSS