感想 マイクル・フリン『異星人の郷』
原題は舞台となる地名「アイフェルハイム」なので邦題はネタバレだが、SFと知らなかったら読まなかった。西欧中世の歴史、科学史が好きな人にもすすめたい
中世カトリック村社会を取り巻く光と陰、それでも人々が何を求めどう生きたかを描く
酉島伝法先生の紹介にあったほぼ同時代の『薔薇の名前』や、少し前の『大聖堂』を見ていたので理解しやすかった
善人もそうでない人も、複雑な人生を生きた。主人公の司祭ディートリヒの会話にユーモアがある。感情豊かで、神の名のもとに科学と人間達のために奉仕している。ヨアヒム、ハンス、テレジア、血のつながりのない家族
この世の終わりのような事態となるが、深い感動が残る
理系の研究者で良きパートナー、東洋系の大人しそうだが熱心な専門家、反抗期のような養子、癇癪持ちや性依存の隠れた顔…女性登場人物もけっこう良い
最悪なシオニズムに至った数百年間の迫害。国内外を問わず不安になると他者に加害してきた人類。イスラム圏や東洋への偏見を思う
複雑な政治情勢、ラテン語、ドイツ語、他言語も出てくる作品世界に入り込ませてもらえた嶋田洋一氏の翻訳、あとがきでの最終章への言及、本当にありがたい
マイクル・フリンの単著SF、もっと読みたい。