レナード・コーエン『デモクラシー』(日本語訳詩:中川五郎)②
進め、海を駆けていけ
偉大なるアメリカの船よ!
強欲の暗礁を乗り越え
誰もが待ち望む岸辺まで
憎しみの突風にもひるまず
進みいけ、航海していけ、海を駆けていけ・・・
それはまずアメリカに訪れる
最良のものと最悪のものとが同時に生み出されるところ
誰もに幅ができ
変化の手立てを身につけるのもここでなら
精神的な渇望を抱かされるようになるのもここでのこと
ここで家族は崩壊し
孤独な人たちが
もっとも奥底から心は開かれなければならないと叫んでいる
民主主義がアメリカ合衆国に訪れる
それは女たちや男たちから訪れる
ああ、ベイビー、わたしたちはまた愛を交わし合うんだ
どこまでも深く入り込んでいって
河は嘆き悲しみ、山がアーメンと叫び声をあげることだろう
それは月の支配下にある潮の満干のように訪れる
荘厳として、神秘的で
艶めかしい衣裳を纏って
民主主義がアメリカ合衆国に訪れる
進め、海を駆けていけ・・・