レナード・コーエン『ザ・フューチャー』(日本語訳詩:中川五郎)②
わたしの存在におまえは気づかないはず
これまでもずっとそうだったし、これからだってきっと
わたしは聖書を記したとるにたらないユダヤ人だ
国家が勃興し、そして滅びるのをこの目で見てきた
その顛末なら何もかもすっかり知っているよ
だけど愛だけが生き延びるためのたったひとつの道
ここにお前のしもべがいる
彼ははっきりと冷酷に伝えるよう教え込まれている
もうおしまいだ、先はもうない、と
天国が役目を果たさなくなってしまった今
悪魔が分け前をせしめている気配をじわじわと感じるはず
未来への心構えはいいか
そいつはとんでもない地獄だよ
あらゆるものがあらゆる方向に崩れ落ちていっている…
昔から西洋社会に伝わる掟は打ち砕かれてしまうだろう
おまえの私生活も突然吹き飛ばされてしまう
亡霊が出没し
道は火に包まれ
白人が踊りくるう
お前の恋人はさかさまに吊され
彼女の顔は垂れ落ちたガウンに覆われる
するとどこからともなく現われるのはお粗末でどうしようもない詩人たち
誰もがチャーリー・マンソンのように大口をたたこうとする