映画『戦雲』感想②
映画は終始、子どもからオバーまで、様々な世代の女性表象の方にスポットライトを当てていて、そこには大きな物語に回収されないために、小さき声を掬い上げようという監督の意図があるのではと感じた。
「戦争映画も見ないようにしてきたのに、今じゃ戦争オタク」と冗談を飛ばす薫さんは、夫とともに連日弾薬庫の建設予定地で抗議活動を続ける。人前に出るのは苦手なタイプだったという娘の茜さんは、市議会議員に立候補してトップ当選。年配議員からの下品な野次にも取り合わず、堂々と自分の意見を述べきる。ストレス解消法は「ヤギのお世話」。
活動の先頭に立ち、自衛隊駐屯地の前でも全く怯むことなく、防衛大臣のスピーチを掻き消す勢いで抗議する有香子さんと、警察から母を守るために動画を撮り続け、「お母さんのように正義感のある人になりたい」という勇気のある娘の明香里さん。まだ小学生なのに!警察に囲まれて、本当に怖かっただろう。「80、90のおばあはこんなものを見るために長生きしたんじゃない」と嘆く母は、さらにその上の世代の、闘うオバーたちの背中を見てきた。戦争で家族を失った節子さんは、次の戦争を止めるために、まだ歌を歌いながら闘っている。悲しんだってしょうがない、歌でも歌うしかない、そんな時代は繰り返してはいけないはずなのに。
映画『戦雲』感想③
翻って、本土に住んでいる私は、最近、次々と嫌がらせのように出てくる人権無視の法案とか、それに声を上げる人に対する冷笑や誹謗中傷とかに、心底うんざりしていた。でも、沖縄の人たちは、この踏み躙られるような気持ちを、ずっと味わってきたんじゃないか。
この映画は、苦しい。希望を託され立ち上がった若者たちの署名活動は、あっけなく議会に潰され、ミサイルを積んだ車輌は抗議活動もむなしく白昼堂々、市街地を我が物顔で突っ切る。とても苦しいけど、島々の強い人たちは、笑うこと、生活すること、隣人とともに生きていること、次の世代に手渡すことを忘れずに、何世代にもわたって考え続け、行動し続けている。「疲れ切るのを待っている」大いなる力に抵抗するために。まだ戦場になっていないうちは、人が死んでいないうちは、「諦める理由がないから」と、諦めずに闘っている。だから、諦めないうちは負けないんだと、負けないためには諦めちゃいけないんだと、私自身も思える。苦しいけど、元気をもらえる映画でもあった。見ることができて本当によかった。