ベネデッタ、すんごい面白い映画だった。 奇跡を起こす修道女が主役で、別の修道女と体の関係を持つ…というストーリーで、狂気と信仰の境が曖昧だし、信仰と肉欲、信仰と恋愛の境も曖昧。 それでいて娯楽映画!
宗教改革者ルターは旧約聖書の雅歌(恋愛詩)について、神への愛を熱烈に書いたものだという解釈をした。
ベネデッタのキリスト幻視はまさにそんな感じ。
騎士道精神のようなロマンチックなキリストが現れてベネデッタを救う。
それでいて、この幻視自体、あまりに都合良すぎるしエロチシズムがあって、修道女の欲求不満の現れなんじゃないか…?と思わせる。
(ところでキリストの花嫁という言い方って、ルター雅歌解釈以前とか、カトリックでもあった言い方? カトリックは詳しくないから分からない…)
キリスト幻視同様、ベネデッタの奇跡についても、最後まで、本当に奇跡なのか分からない。
少なくともベネデッタは奇跡だと信じてるけど、それが狂気によるものなのか、観客にも作中の周りにも判断つかない。
ベネデッタが異言が行う様子が描かれるけど、ああいう状態の人って、実際にいたらメンタルおかしいのかな…ってなるし、そういう感じに描かれてるように思える。
ベネデッタ 感想
それからペスト関連、歴史描写が「有名どころ、全部盛りました!」でめちゃくちゃ楽しかった。
黒死病という本があるんですが、この本を読んでると分かると思う…。
https://www.amazon.co.jp/dp/4122069149
ペストはヨーロッパではフィレンツェから始まって、まず港町で猛威をふるい、うちは信仰に守られてるから大丈夫…という街を飲み込んでいく。
なので、この作品でも、まずフィレンツェ!地獄絵図!から始まるのが良い。
修道院長の娘が自ら鞭打ちしたところで、もしやこれはペストと言えばあれが来る…?と思ったら、予想通り、鞭打ちしながら半裸で街を練り歩く修道士たちの集団が現れたのでテンション爆上がりした。これだよ、これ! この世は末法!
苦悶の梨も、拷問有名グッズ出しときました!なサービス精神を感じた。
実際はこんな展開早くないんじゃないかと思うけど、これは映画なのでさっさと進む感。
あとこの頃は、彗星は凶兆だと言われてたのに、ベネデッタは吉兆だとするのも面白い。
(これも↑の黒死病の本に書かれてたかも)
娘は自殺すると天国にいけない→母も自殺して一緒に地獄へ…ってことなのか。
とにかくあらゆる要素が山盛り映画だった。
というわけでものすごく面白かったんだけど、さらに下品になってないのがすごいと思う。
ナンセンスに傾きかけてるけど、あくまでものすごく真面目に撮られてる。
美しさもエロティシズムも作中の展開の邪魔をしない。
年間ベストかもしれない!
面白かった~。