『バーバリー・コースト』(1935、ハワード・ホークス)
ゴールドラッシュに沸くサンフランシスコにほぼ文無しで船に乗ってきた女(ミリアム・ホプキンス)が港に降り、金を掘り当てて金持ちになった男と結婚の約束をしている、その男はいるか、と周りに尋ねると、その男は賭博場のルーレットで16回連続で黒を出して財産を全部取られた後死んだ、と教えられる。というところから話は始まる。
ストーリーは2つのラインがあって、一つは女が賭博場の親玉に気に入られて雇われ、自らルーレットを回して金鉱掘りの男どもから金を巻き上げる側に回るが、ある日ある時、純粋な魂と詩人の言葉を持つ美男の金鉱彫りに出会い衝撃を受け、最後はその男を泥に塗れた街から旅立たせるために身を投げ打つまでの、男女の役割をひっくり返してみせたホークス的メロドラマ。
もう一つは、イカサマ賭博で巻き上げた金で誰よりも金持ちで権力を持った男ーーガマガエルのような容貌でフランス人の名前を持ち貴族のパロディのようなヒラヒラの衣装を着て耳飾りをしている怪異な男ーーに保安官と新聞屋が組んで自警団を結成し悪を打ち倒すという話。
ラストにこの二つのラインがきっちり合わさってきれいなハッピーエンドになる。ホークス映画は面白いね。
でも、疑問点はあって、最後のミリアム・ホプキンスがジョエル・マクリーを救うために身を投げ出すあのやり方、何か他のやり方はなかったのかなぁ、とは思う。
2回目だけど、やっぱり、自警団は怖いね。悪の親玉の右腕の男を捕まえると、泥道を歩きながら1分もかからない私法による即決裁判でそのままその男を吊るしてしまう。この場面、怖い。
ウォルター・ブレナン、他のホークス映画では”酔っ払いのおもろい爺さん”だけど、ここでは”酔っ払いの不気味なじいさん”をやっててちょっとだけ怖い。