『戦争と母性』(1933、ジョン・フォード)
邦題に関わらず、母性というより父権性の話。
主人公ハンナは母子家庭の母だけど、亡夫と気づいた家の土地を守ろうと息子の人生に対して支配的に振る舞う。息子が母の見ぬ間に恋人を作り結婚したいと言い出すと、二人を割くべくおりしも募集されていた第一次大戦の欧州戦線の兵士として送り出し、結果、戦死させてしまう。恋人は既に妊娠しており、母は出産を手伝い生まれた自分の孫を気に掛けつつも拒絶する。
そのまま10年が経ったのち、米政府の愛国的な政策としてフランスで葬られた兵士の母親たちによる墓参が企画される。当初拒否していたハンナだったが周囲からの勧めに折れてこの”巡礼”の旅に参加する。その過程での出会いや経験を通して(この部分が映画のメイン)自分の息子に対する支配的な振る舞いこそが彼を死に追いやったのだと認め、国に帰り彼の恋人と自分の孫を受け入れ抱きしめる。
始めて息子の恋人が登場する場面、彼が手に持った石を投げるとそこにあった小さな池に飛び込み波紋を作り、その波紋が収まった静かな水面に彼女の姿が映る、なんていうところ幻想的と言いたいぐらい素晴らしい。随所に繊細だったりユーモラスだったり大胆だったりする演出が光っていてため息が出た。
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