『宗方姉妹』(1950、小津安二郎)(ネタバレあり)
初見。怖い映画だった。父親が娘の結婚させようと気を揉むという話を何本も繰り返し撮っている小津が、ここでは、夫婦関係が行き詰まっている姉を離婚させようとする様子を描いている。
妹(高峰秀子)があれこれと立ち回る間にも、姉夫婦の緊張が高まっていく様子がまず怖い。そして姉(田中絹代)がついに離婚を宣言すると、夫(山村聡)が突然暴力を行使する。小津映画で物理的な暴力を見ることは滅多になく自分が見た範囲では有名な『風の中の牝雞』の階段落ちと『東京暮色』の有馬稲子ぐらい。未見の作品の方が多いのでまだあるかもしれないけど。この映画でのそれは唐突かつ激しい。怖い。そしてその夫が泥酔して大雨に降られずぶ濡れになって帰ってきて突然の心臓発作で死んでしまう。それに気づいた妹が絶叫する。あんな叫び声を小津映画で聞くとは。
簡単にまとめると「有害な男性性」の話ということになるんだろうか。周りを苦しめて最後は自分も殺してしまうんだから。