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僕は地方のジャズクラブに専属ピアニストとして18年在籍していた。そこは閉ざされた環境で、経営者や先輩から「お前の為に怒るんだ」「下手な癖に生意気言うな」「給料が安いのは勉強代だと思え」という言葉、反省会と称した延々続く説教、土下座の強要など、中々のパワーハラスメントが日常化していた。

さっさと見切りをつけて辞めれば良かったのだが、少ないながらも収入は安定していたし、何せ途中で投げ出す事への抵抗があった為にそうしなかった。

そして時が経ち、知らない内に違和感を自分の未熟さに置き換え、我慢を美徳とし、お店の都合を最優先する社畜と化していた。

それに気がつかされたのは、在籍が17年目となったある日、先に決まっていた重要な約束をそのお店の都合に合わせて反故しようとした時に、それまで支えてくれていた妻から「私は貴方がピアニストでいて欲しいから応援しているのであって、お店を存続させる為では無い。人として間違えた事はしないで」と涙ながらに訴えられた時だった。

ハッと我に返った僕はその半年後に店を辞めた。

『逃げる』『辞める』は恥ずかしい事ではない。大事な選択肢だと今は思える。

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