トッ腐ガン ルスハン R18
親父は早くに逝っちまったし、母さんとも思春期には死別してるから、パッとそれだけ聞くと多分俺は「不幸な子供」だろうと思う。でもそんな過去を知らない連中の方がよほど的確に俺のことを評価する。
例えばフェニックス。
養成学校で出会って数ヶ月、何がきっかけだったか割とよく話すようになって彼女が言った。「あんたってさー。わかりやすく甘やかされて育ちましたって感じ?」と。俺は一瞬呆気に取られ、思わず破顔した。そう、俺はデロデロに甘やかされて育った。愛情のシロップ漬けみたいな感じで。そして不死鳥のよく当たる当てずっぽうは続く。「そんでアイツは超厳しく躾けられましたって感じ」視線の先は、ピッと無駄に背筋を伸ばして飯を食うハング。
なるほどな。俺がシロップ漬けなら、お前はタバスコ・ファウンテンか?
気が合わないのは当然だ。
…違う。本当は知ってる。お前に腹が立つのは、生育環境の違いなんか関係ない。
空に向かう姿勢。熱っぽく語る航空工学。ドヤ顔のマウント。僚機を見捨ててでも勝つ合理主義。誰も追いつけない速さ。ムカつく誰かさんに似ているからだ。
甘えん坊の雄鶏君は、甘やかされた挙句にここぞと言う時に裏切りをくらって捻くれた。けど、それももう克服したと思ってたんだ。
お前が思い出させるまでは。