ルスハンのお題10連
1『僕らの恋は嘘だらけだった』
2『死が二人を別つまで』
3『Cold Rain』
4『君の声が聞こえる』
5『君とバニラソルト』
6『願言(ねがいごと)』
7『君の為のアポトーシス』
8『花に嵐』
9『恋は雨色』
10『スパイスはお好みで』

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ノベレンバーやってる最中ですが、お題が良いので。

僕らの恋は嘘だらけだった(ルスハン・R18) 

煽りに煽って来やがるので、とうとう無理になって半ば殴り合うような気分でベッドイン。
気がついたら結腸を抜いていて。腕の中の男は意識を飛ばして尚、奥の奥でくちゃくちゃと咀嚼するように俺の熱棒を愛撫した。やらしすぎる。…………けれども、問題はそういう事じゃない。

「頼む、起きてくれハング…」
繰り返し声を掛け続け、ようやくお前は目を覚ました。と言っても、瞼は持ち上がったものの、瞳はまだまだどっかにぶっ飛んでて。いつものムカつくタイプの覇気はなく、無防備に視線が彷徨っている。……可愛すぎか……。頭を抱えてのたうち回りたくなるからやめろ。
「死ぬほど経験あるとか、お前……全部嘘だろ……」
 そう。問題はそっちだった。トロンとした目のままお前の顔がジワジワと最中のようにまた赤くなる。
「うるせぇ……。お前もノンケとか嘘だったろ……」
 確かにそれは嘘だった。
「「何でそんな嘘……」」
 同時に言って、同時に溜息を吐く。万が一にもこうなるなんて思わなかった。だから嘘は吐き放題だった。
 つまり、俺達は虚偽と虚勢で散々空中戦をやり尽くして来て、スリップ事故で身体の方だけタップリ濃厚にお付き合いを済ませたところってな訳で。今更、なんて言って口説けばいいのか。見当もつかない。

死が二人を別つまで(ルスハン・R18) 

結局口説く事も口説かれる事もなく、場合によって時折寝る関係に落ち着いた。つまるところ、ただのセフレってやつか。
俺は自分が知らなかっただけでセックス依存だったという事だなと、俺は現状について結論した。何故なら、一ヶ月と空けずに付き合ってもいない奴と会う事や触る事、寝る事ばかり考えている。明らかに変だった。けれども向こうだって似たようなモンだろう。いつだかは、廊下に引き摺り込まれてキスされた。トップガンの課程はそんなに長く続かない。どうせこの関係は終わる…。そう思えば気が楽だ。
何も考えずに家に誘うと「ぁー」と曖昧な返事でお前は俺の部屋にやってきた。付き合ってもねぇのに映画を一緒に見てポップコーンを食べ、なんとなく感想を言い合う。手を繋ぐのはダメだろうなと思っていたらキスされた。まあもう映画はどうでもいい。
「俺達、ヤリてぇだけだよな?」
そんなに心配そうな顔をするなよ。映画の中で「死が二人を別つまで」と宣誓が始まって、花嫁が花婿を捨て、クソ男と駆け落ちするシーンだった。
とりあえず仕掛けられたキスを倍返ししてから、
「そうじゃなきゃ問題か?」
と聞いてみる。考えるような間を取って、
「多分?」
と惚けた返事。まぁいいや。セックスの後で考えよう。お前もきっと賛成だろ?

Cold rain (ルスハン・R18) 

やけに冷える日で、挙句に雨が降っていた。風も強い。そんな日に限って水中訓練。エリートの集まりは流石に士気が高く、下士官のように愚痴ったりする奴は誰もいない。表情からも不満は窺えなかった。
耐久時間をクリアした奴からプールサイドに上がることができるが、正直今日ばかりはプールの中の方がずっと極楽だ。それでもお前は一番最初のトライで耐久時間を難なくクリアし、プールサイドに上がる。俺も耐えればクリアできそうな気がしたが、プールサイドに上がって風に耐えるのが嫌だったので態と3回トライした。俺はこの中で最も意識が低いかもしれなかった。
訓練を終えてシャワールームに何食わぬ顔で皆移動する。教官の目が完全になくなったからか「さみー!」と誰かが叫んで次々に続いた。なんだ…俺だけじゃなかったか。ホッとして俺も暖かいシャワーを浴びた。いつもより長く浴び、生き返ってシャワーから出る。
「ズルしやがって」
同時に隣のブースから出てきたのがお前で俺は仰天した。
「ズル?」
「浸かってる方が合理的?俺がこの後体調不良で成績を落としたら、確かにお前の戦術が正しいって事になる。ムカつく…」
一人で勘違いして一人で理解を深め一人で怒っている男に俺はバスタオルで口元を隠しながら笑った。
やっぱ可愛い。

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君の声が聞こえる (ルスハン・R18) 

お前の声はよく響くので、聞こうと思わなくても何処にいるのかすぐに分かる。たとえばカフェテリアで食事してる時だってそうだ。
チラリと顔を向けるとコヨーテと話しているようだった。コヨーテの声は聞こえずお前の声だけが聞こえる。今日も絶好調だとか、お前と飛ぶ時はお前が撃ち逃しを片付けるからまたパーフェクト狙えるなとか。
「今日も調子が良くて結構だわね」と隣から冷めた声で言われて何も返さず苦笑して食事に戻る。いつの間にか不死鳥が隣の席で食っていた。
つまりお前の声が聞こえるのは俺だけじゃない。お前は目立つし美人だし成績優秀、キラキラしている。好かれるかどうかはともかく、皆お前を気にしている。
「いよいよアイツが首席か」
苦々しい声に「不満か?」と聞く。
「やり方に異論はあるけど、まあ仕方ない。でもアンタが本気だしてないのは不満だけど?」
「俺は本気だし必死だぞ?」
「嘘じゃないのは知ってる」
顔を顰める俺に澄まし顔が返ってきた。どういう意味だと彼女を見つめると、「次も俺様に任せとけ!」とお前の声が聞こえる。
「アイツが『カッタリィなノロマ野郎の安全マージン』って。癪だけどそこは同意見」
首を捻って笑う不死鳥は最後の一口を豪快に口に頬張った。
アクセルを踏み抜け?真平ごめんだ。

君とバニラソルト (ルスハン・R18) 

甘いモンはコンディションの敵だ。だから俺は殆ど食わない。なのにお前は気づくとスナックだのアイスだのを気にせず食い散らかしている。体脂肪はいくつだと聞いてみた事があるが、俺とさして変わらなかった。理不尽。
お前の部屋で映画を見て、ポップコーンを摘む。セックス終わりにアイスカップにスプーンを突っ込んでいるのを見て、俺は呆れ溜息を吐いた。
「いる?」「いらん。なんでそれで太らねぇんだ?」「もちろん太る。その分消費しなきゃならねぇな?」
ハ、と乾いた笑い。鼓膜が痺れるその笑い方が嫌だ。食い終わってエロエロしいキスをされ、もう一回戦。甘くて塩っぱい。つまりこれは摂りすぎたカロリーを消費するワークアウト。俺は摂りすぎてねぇし。クタクタに絞られた後「俺もアイス」とベッドでくたばったまま強請る。思案気にした髭が、
「いーけど。順番が逆だろ?今から食ったら太るぞ?」
正論を呟く。枕を投げつけ、息の根を止めるべくのし掛かった。わかったよ!わかった!やるから!と喚いたお前がアイスを取ってきて俺に渡す。
甘くて塩っぱい。
課程修了までもう秒読みだ。
こんな味は知りたくなかった。
自室に戻る前にジムに行き、死ぬ程走って帳消しにしちまおう。ドロドロに溶けたアイスみてぇに疲労して、きっと忘れる。

願言(ねがいごと) (ルスハン・R18) 

俺は何かに願掛けしたりしない。目標を立て、その実現の為に努力する方が願い事を星にかけるよりずっと合理的だからだ。実際、相応の努力という対価を支払い、欲しいものは全て手に入れてきた。全て…?まぁ、大概は。
それでも一つだけ、努力しても無駄に終わった、叶わぬ願望がある。
「雄鶏が安全マージンを取っ払って飛ぶ姿を見てみたい」というやつだ。
安全マージンは言わずもがな重要だ。重要だが、後一押しという場面でそこに食い込む必要がある時だって当然ある。お前はいつもそこで、気持ち悪ぃほど正確に、マニュアル通りに手を緩めた。
一方お前はセックスの時に、もうこれ以上はと思う限界を、いとも容易く突き破る。ゴリゴリと限界の限界を浅ましく追求してきて、まだ先があったのかと俺はいつも愕然としながら意識を投げ出す。限界性能を引き出すってのはそういう事だ。
俺はお前の限界が知りたい。限界の限界を超えたその先も。それで漸く俺の限界も更新される。これは確信だった。
今日も雄鶏は空を飛ぶ。安全マージンをきっちり残し、あの猛々しい真っ黒の瞳なんかお首にも出さず。
ふんにゃり笑って超音速でノンビリと。
全くもって反吐が出る。
クルクルと楊枝を端から端に回して仕事に戻った。何度見上げても無駄だ。
知ってる。

君の為のアポトーシス (ルスハン・R18) 

とは言え俺様は合理主義者だ。現実主義でもある。だから無駄な事なんかせず、順調に首席を取った。
何事もそうだが、目的がはっきりすれば自ずとノイズになるような感情も欲望もなりを顰めて行く。
自然と死ぬんだ。不要な部分が、システマティックに削ぎ落とされて、あたかも最初からそうプログラムされていた通りに死を迎える。
だから、きっと俺は雄鶏と寝た事も、目覚めて眼前にあった浅くない傷痕も、陽気で軽い身のこなしも、笑う時に掠れて鼻に抜けるような音も、ふとした瞬間に見せる根暗を極めた瞳も、無駄に柔かい唇と肌も、キスする時に掠めてウザい髭の感触も、綺麗さっぱり忘れるだろう。
どんなに美しく咲き誇った花も、やがて枝からぽろりと首を落とすように。途轍もないインパクトがあっても、俺の人生に不要なものは、いつか俺の人生から排除される。
これはお前の為でもあるんだぜ。お前だって、お前の人生に集中してる。俺はそのノイズになるつもりは毛頭ない。
ただ偶々今ここで重なった道が、この先分かれて二度と交わらない。
「お前所属は?」「リモア」「俺はオシアナ」「そうか」「あぁ」
またなと互いに言わないのは、互いの人生の機序に従って、互いの存在が排除されたから。自然の摂理だ。
さよなら、俺の雄鶏ちゃん。

花に嵐 (ルスハン・R18) 

満開の盛りを迎えようとするアーモンドの花が、予報になかった強風で花吹雪を巻き起こし、無惨に散った。
要所要所でこういう不運は起こるものだ。つまり別離は突然に、時に劇的に最悪なタイミングでやってくる。
けれども。二分十五秒には及ぶまいが、俺なりの最速で首の皮一枚、雄鶏と狼の首を繋ぎ止める事に成功した。
つまりこのミッションにおいて嵐は辛うじて花を直撃せず、彼らは親愛の盛りを無事に迎える事ができた。
同じ海軍の飛行士という立場ながら、もう二度と交わらないだろうと思っていた雄鶏と俺の人生はこうして劇的に再び交錯する事になった。
当初は割と最悪な再会だと思っていたが、事態が収束を迎える頃には何故かチームの誰もが温かい気分になっていた。
それこそ花に嵐の喩えもある。今ある命を、この邂逅を愛おしむべしと、帰港後にはアレに乾杯コレに乾杯と今回のチームで杯を重ねた。
それで。
「よぉ、救世主。話がある」
陽気な声音に似合わぬ真剣な瞳。ごくりと喉が鳴った。
プログラム死が完全に機能し、髭の感触を記憶から拭い去ったのはつい最近だ。その上、お前に再会してからまた身体が疼いてるなんて事は知られる訳にはいかなかった。同じ轍を踏むのはごめんだ。
「二人で話したい」
なるほど。こっからが俺の花に嵐か。

恋は雨色 (ルスハン・R18) 

「目的がはっきりすれば人生のノイズは自ずと排除され、只そこに至る道だけがくっきりと姿を現す」
昔そんな事を嘯くように言ったお前に、俺が思った事はと言えば『シンプルでいいよな、お前は』という恨み言。
けれども今ならお前の言った事がよく分かる。俺の人生を知らねぇ内に覆い尽くしていたらしいマーヴへの怒りと恨みは、共に空をかっ飛び、共に死にかけ、互いに命を救いあって。最後の最後はお前に二人揃って救われて。綺麗さっぱり心が晴れ渡った。不要なノイズを取っ払って見えたものは何だと思う?俺は恋をしてるという事実だ。笑わば笑え。
「二人で話したい」
雨上がりの草露のようなお前の瞳は唐突に曇った。そんな目をするな。急に自信が無くなってくるだろ。何せ俺は自分の人生を主体的にコントロールするようになって日が浅い。ずっとそうしてきたお前とはベテランとアマチュアの差があるんだぞ。
まぁいいさ。今回の件で俺は学んだ。どうすりゃいいって迷った時には、思い切りアクセルを踏み抜いちまえばいい。考えるな、動け。
この恋がたとえ大雨になっても、速度全開でかっ飛ばせば、その内、雲を抜ける。それでまたあの草露色を拝める。
ビビってる時こそ全速力。多分そういう事。
「なぁ、結婚しよう」
おっと、ちょっと踏みすぎたか。

スパイスはお好みで (ルスハン・R18)完結 

「ハァ?」意味が分からねぇって感じのお前はやっぱり可愛かったので、「まぁまぁ」と取りなして指輪を買った。
「ハ、ハァァ?」とお前は赤くなったので、多分大丈夫。ターボをポチリとやって更にカッ飛ばす。
ほらな。気付けば高度15000M。地平線は丸みを帯び、地球は丸いと実感できる。
つまり俺達は同棲生活を始め、結婚の準備をしていた。
「…ちょっと待て。何かがおかしい」
「今更お前…俺のノロマが移ったのか?」
「俺がノロマな筈ねぇだろうが!」
「だよな。なら良かった。ここに素早く署名してくれ」
後は申請するだけだ。今のところ順調だが、俺達の事だ。小さな喧嘩は日常茶飯事、勘違いや考え方の相違で時に深刻な罵り合いもあるだろう。
けれどもお前が言う通り。目的意識がはっきりすれば、自ずと捨てるべきものは明確になる。例えば長年の経験で形作られた己の価値観すらも、時にはその対象になるのかも。そんな経験も俺達には良いスパイスになるだろう。
「俺さ。水中訓練の時にお前が唇真っ青でシャワーから出てきて『これで体調不良になったらお前の戦術が勝ちになっちまう』みてぇな事言った時、多分お前に堕ちた。馬鹿可愛くてさぁ!」
結果。申請する前から離婚の危機が訪れる事になったが、俺達は幸せである。完

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