(続き)『バビロン』のネタバレ感想(褒めてない)
登場人物も記号のようで薄っぺらい。主人公のマニーはまだしも、メインキャラのコンラッド、ネリー、シドニー、フェイに関しては人となりも人間関係も表層的で、物語に立体感がない。特に女に振られては落ち込むジョージとコンラッドの関係がどれほど深いものなのかなんて、ジョージの自殺でコンラッドが呆然として初めて発覚って感じで面食らった。業界におけるマイノリティがどれほど不遇だったかなんてよく知られた話だろうに、シドニーやフェイのエピソードも薄っぺらいし、マニーだって急に魔法みたいに出世するので、いかにアメリカン・ドリームの業界とはいえちょっと都合良すぎでは……。
90年前のハリウッドの乱痴気具合はビジュアル的にフィーチャーしつつ、闇を描くわけでもない。映画史讃歌をやりつつ視野は狭く、目新しくもないエピソードのパッチワーク。チャゼル監督は過去の映画に対するリスペクトが足りないといった感想をいくつか見かけたけど、リスペクト云々以前に引用の仕方のセンスがないのではないだろうか。