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『バビロン』のネタバレ感想(褒めてない) 

『バビロン』鑑賞。偉大なる映画史の一部になることの尊さみたいなのがテーマなんだろう、それ自体は好みだし色んな映画で観てみたいテーマでもある、ただし今作は全体的に叙事がヘタクソすぎた。脚本がダメです。
まず、映画業界は描かれているけど役者と俳優とプロデューサー以外は映画製作に関わるスタッフも観客も批評家も透明化され、かつ「よく分からないもの」として壁の向こうに放り出されたまま、閉じた視野に終始している。映画業界人としてチャゼル監督の実感もあるんだろうけど、テーマ自体は映画史と大きく出てるもんだから、それでは独善的と言わざるを得ない。

叙事の立ち位置もよく分からない。下劣なハリウッド業界を蔑みつつスノッブな社交界のお高さも批判、象の糞に尿かけプレイにゲロ噴射に痰吐きまくり男にと嫌悪感を催すような汚物描写をしつつ(しかもけっしてセンスが良くない使い方)、実際には欧米映画史讃歌みたいなスノッブなことやってて、育ちの良いお坊ちゃんが不良ぶってみた、みたいな映画だったw

(続き)『バビロン』のネタバレ感想(褒めてない) 

登場人物も記号のようで薄っぺらい。主人公のマニーはまだしも、メインキャラのコンラッド、ネリー、シドニー、フェイに関しては人となりも人間関係も表層的で、物語に立体感がない。特に女に振られては落ち込むジョージとコンラッドの関係がどれほど深いものなのかなんて、ジョージの自殺でコンラッドが呆然として初めて発覚って感じで面食らった。業界におけるマイノリティがどれほど不遇だったかなんてよく知られた話だろうに、シドニーやフェイのエピソードも薄っぺらいし、マニーだって急に魔法みたいに出世するので、いかにアメリカン・ドリームの業界とはいえちょっと都合良すぎでは……。

90年前のハリウッドの乱痴気具合はビジュアル的にフィーチャーしつつ、闇を描くわけでもない。映画史讃歌をやりつつ視野は狭く、目新しくもないエピソードのパッチワーク。チャゼル監督は過去の映画に対するリスペクトが足りないといった感想をいくつか見かけたけど、リスペクト云々以前に引用の仕方のセンスがないのではないだろうか。

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