これらにより、神職資格を持つ神社関係者が神道の本や論文を発表する際、ほぼ間違いなく本庁による検閲や統制が実質的に発生している状況です。
その圧力の中でもなるべくまともなもの(歴史修正をしない、史料資料の恣意的な読み取りをしない、本庁に都合の悪い事実を指摘する)を書こうと努力している方もいますが、非常に厳しいようです。
例外的に、本庁の圧力や右傾化が今ほど酷くなかった時代を生きた方々の著書は(特に他大学出身で資格だけ取った方など)比較的自由に書かれているものもありますが、概ねそういった方は現在80代90代既に帰幽されているなどで、最新の人権思想に触れられる環境にないことがほとんどです。
余談ですがうちの恩師は海外神社の本を出して「首が飛ぶ」と延々言っていますし(海外神社や神仏習合の話題を本庁の目のある場所で行うのはかなりの危険行為です)、私も既にいつ資格剥奪や除籍されてもおかしくない状況にあります。
というわけで、現在神社界は、反差別を掲げる方にお勧めできるような本を世に出せる状況にはありません。本庁の意向に真っ向から逆らう人権思想を軸にした神道の本や論文を出すことは至難の業です。
ただ、神道は、本庁のものでも神政連のものでも国ものでもなく、我々地べたで実践を行うものたちそれぞれのものです。
本も論文も出せなくとも、我々は存在していますし抵抗していますよ、とお伝えしておきます。(うちの神社は日の丸も掲げませんし祝詞に天皇崇拝の文言も入れません)
ついでにいうと神道はそもそも思想体系ではなく呪術という技術の体系なので、それらに関してはゼノフォビアも選民思想も家庭も天皇制も(全くとは言えないものの)無関係のものが多いです(口伝が多く、民俗学のフィルターを通してしかほぼ世に出ていないところが難点…)。
また(神話ですが)歴史書としては、風土記は朝廷の命令で作ったはずなのにかなり反朝廷反皇祖神な内容も多く面白いです。
恩師の本はセンシティブすぎて補助線引きまくらないと誤読するタイプの本なので、神道に触れてきていない方にお勧めはしません…