佐藤究『テスカトリポカ』読了。
メキシコの麻薬密売人とアジアの臓器密売人が手を組み、新たに臓器ビジネスを始める、という犯罪小説に、アステカ神話の彩りを加えたもの。
とても面白かった。端役にも人生があり、それをいちいち語るのですが、それぞれがそれで一本の小説のようで飽きない。
描写がいちいち詳細で分厚いので、あらすじのエピソードが始まるまでに頁の半分ほどを費やすのですが、そこまで辿り着くとあらすじは結構どうでも良くなっています。エピソードを語るための土台としてストーリーがある感じ。
題材が題材なので、人体を破損する場面がとても多いのですが、文体が乾いているので、あまり想像せずに読むことができます。想像しちゃうと、ちょっとダメですね。
んで、アステカ神話の語り口は魔術がかっていて、感じに呑まれそうになります。現代にアステカの神を降ろす試みなんだと思う。
現在的視点だと、アステカの神は邪教やんなという思いは拭えず。
アステカの神をへのカウンターとして登場するのがキリスト教で、そこでそれをそう取り出すのかと、びっくりしました。どう捉えたらいいか分からん。
起承は「そうなってしまう」という事実の積み重ねが厚いのですが、転結は「そうあって欲しい」という願いなので、ちょっとふわっとしてました。

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あとまあ、違法薬物怖いです。
薬物の機序そのものも怖いのですが、違法薬物に絡みたく反社のしがらみが怖いです。
一度でも手を付けると縁が結ばれて絡め取られて地獄に引き摺り込まれる様が、むざむざと活写されていました。
いやまあ、違法薬物に手を付けなくても、地獄に落ちていく登場人物もいたので、世の中落とし穴だらけですね。

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