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有吉佐和子『複合汚染』読了。
無添加・無農薬を謳っている製品を見ると、非科学的だなあ(科学の中身は知らんけど)とわたしは思うのですが、無添加・無農薬が切実な時代がありまして、その頃(1974~1945年)に書かれたのが、この、日本版『沈黙の春』こと、『複合汚染』です。
ルポタージュ風の小説。
横丁の御隠居なる作者の分身くさい賢老人が出てくるので、そこらへんがフィクション成分でしょうね。
巻末の解説にもあるように、1974年の第10回参議院選挙のすったもんだがこの小説の導入部なのですが、選挙の話はいつの間にか消えています。が、有吉佐和子の語りが上手いのであんまり気になりません。

書かれているのは、農薬・化学肥料・殺虫剤・食品添加物・合成洗剤・排気ガスと、あらゆる化学物質の濫用への疑義と警鐘です。
で、まあ、今の目線で読むと、農薬の所為で野菜が腐らなくなった、農薬の所為で野菜が腐りやすくなったと、言わんとしてることは分かるけど牽強付会が過ぎる感じです。
本当の野菜とか、本当のお漬物とか、美味しんぼみたいなこと言ってんな、というのが感想です。昔は塩で歯を磨いていた、歯磨き粉で磨くと舌が変になるし、磨き過ぎて歯が削れて返って虫歯になる、といったことも書かれていて、今読むのだいぶ厳しかったです。

この本を読もうと思ったのは、導入の参議院選挙パートで、本人の預かり知らぬところで選挙に担ぎ出そうとして有吉佐和子にぞっとされる菅直人を読みたかったからです。
読めば分かるのですのが、有吉佐和子はほとんど外見描写をしないのですが、わざわざ(ハンサムだったが)と書かれてんですな。満足!

冒頭の選挙パート、名前書いときゃ分かるだろと言わんばかりに、なんの説明もなく、市川房枝、青島幸男、紀平悌子、野坂昭如、石原慎太郎、横井庄一、吉武輝子といった面々が出てきて、その後の展開には関わりがないので、そういった意味でも、今読むのは厳しいですね。
第10回参議院選挙の結果(果たして市川房枝は当選したのか)は、Wikipediaを見ましょう。いい時代!

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