汀こるもの『探偵は御簾の中 白桃殿さまご乱心』読了。
平安ラブコメ本格ミステリー、3作目。
作中で明言されているとおり、主人公の忍さまは事実として幸せな人妻なのですが、幸せだからむごくて。幸せだから、夫と不幸ごっこをして遊ぶしかできなくて。その様がひどくむごくて。平安時代の幸せのかたちがむごいんだなあ、と。
じゃあ幸せでなければむごくないのかと言うと、今作のラスボスの夫の兄嫁の白桃殿とその姉妹のように、直球で地獄なわけで。
でも白桃殿は不幸だから戦うことはできたわけで(敗北したけど)。
忍さまは幸せだから幸せに縛られて抗議の声も上げられなかったけど、今回事件に巻き込まれて異議を訴えることができて良かったね、みたいな。
忍さま夫婦には幸せになって欲しいのですが、平安時代の幸せのかたちを変えるのは不可能で、個人的な抵抗しかできなくて、個人的な問題に落ち着いては駄目だという意識もたぶん作品にはあって、だいぶ詰んでるなあ、平安時代。
「阿弥陀ヶ峰の人喰いの家」は、平安密室ミステリーで、忍さまが活躍していて楽しかったです。
あと、祐長はお兄さまは世間に適応しきって成り果ててしまっているのですが、成り果てていない面も少し描写されてて、そこがやるせ無くていいですよね。