木ノ下歌舞伎 勧進帳
再演を重ねている作品ですが今回が初見。面白かったです。私の歌舞伎での初勧進帳は、富樫が実は山伏たちの正体を察した上であのやりとりをしているという富樫と弁慶の頭脳戦という解釈のもので(一緒に行った友人にこれはオーソドックスな解釈ではないという話は聞きました)勧進帳はそういう話だと思い込んでおり、だから今回の富樫の友達いなさそうなぼっちっぽい感じが新鮮に感じた。逆に歌舞伎の本流の解釈も気になったり。
頭脳戦解釈でいたので、国籍やジェンダーのボーダーラインという解釈はあまり思いつかなくてそれも面白かった。でも、勧進帳のボーダーは比喩としてとるなら国境や難民かなと思うし、偽装してそれを乗り越えるという物語にあまり詰め込みすぎない方がともちょっと思う。
義経の高山のえみさんのたたずまいが良かった。私の席からはちょうど目元が笠で隠れて口元だけが見えて、何を考えているかはっきりとはわからないんだけど、でも良い部下を持って満たされているような表情というのか。弁慶のリー5世さんも、いかつさとインテリジェンスと愛らしさが備わっていて魅力的。あと、番卒と義経の部下が表裏の関係のように見せてるのがとても気に入りました。ダンス的な部分でもここが綺麗。

フォロー

スウィングキャスト回でしたが、満足して帰ってきました。でもアフタートーク聞いた後だと富樫役は本キャストでも見たかったかも。
アフタートークは杉原さん木ノ下さんに本キャストの岡野さん坂口さん。スウィングキャストの試みのお話でしたが、実験的で興味深い。ダブルキャストやアンダースタディとはどう違うのか気になってたんですが、キャスト固定で再演が重なる作品では新しいメンバーがいい刺激になるようだし、あとメンター的な若手俳優の教育的な側面もあるようなのが面白かった。(スウィングの俳優さんは義経弁慶以外の5役のフォローをするのだけどスウィングキャスト版の役柄として富樫と常陸坊海尊を中心に稽古されているみたいで俳優さん同士の交流も密だったらしい。)ウェストエンドとか商業演劇のアンダースタディは結構システマティックにやっていると思うけど、これはある意味で日本的な劇団制度の中で成立するような試みを思いつかれたのかなと思う。コロナ禍を経て代役問題が直面する中で良い制度を考える上でとても良い実験だったと感じました。

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