〈怒っているし結構長い文章〉
※いつか別のところにも改めてまとめたいけどざーっと書いておきます。
おととい退職のあいさつ文を勤め先のScrapboxにページとして投稿したのだが、きのうの最終出社日に経営メンバーによってページごと消されるということが起きた。16年在籍してワースト・オブ・理不尽だと思った。昨日の昼過ぎにそのことがわかり、めちゃくちゃに傷つき、それからずっと怒り狂って頭痛と疲労でおしまいになっていた。とにかくたくさん眠ったので今朝はだいぶましな体調になった。でも当然ながら怒りは消えてない(し、積極的に消すつもりも別にない)。
そのページには大まかに3つの文章を書いており、その2つ目が「No Tech For Apartheid」に関する内容だった。それを理由に削除をしたらしい。パレスチナで1年以上続いている虐殺とその理不尽さの話、AWSとGoogle Cloudがイスラエルと手を組んでパレスチナでの虐殺を可能にしてしまっている話、そして勤め先のこの会社はAWSのパートナー企業のひとつなので結果的にとはいえ加担してしまっているようなものだという話、パートナー企業として抗議などできることを検討してほしいという話、それができないなら各個人でボイコット・寄付などのできることをしてほしいという話を書いた。退職日のすぐ手前までこの話をすることができなかった自分が情けないということも書いた。
文章は4時間くらいでざっと書いたので全体的にやや雑ではあったけれど、でかい誤解が生じるようなものではなかったと思う。「最後っ屁」と言われても仕方ない投稿タイミングではあるけど、「最後っ屁」でしか伝えられないことって良くも悪くもあるはずだから一概に悪いことではないとも思った。ネーミングが悪い。屁って。
経営層メンバーは「この会社の活動がパレスチナに対する虐殺行為を助長するという〈歪んだ認知〉とも取れる内容で、明らかに不適切と判断」したのでページごと消した、とSlackの全員いる部屋に投稿していた。その投稿は私がもう見ていない想定でなされたものみたいだったけど、私の業務パソコンの初期化作業が遅れていたせいで私も見てしまったのだった。私も投稿者にとっても運が悪かったってことになる。全く嬉しくはないけど気付けてよかった気もする。
No Tech For Apartheidキャンペーンで声を上げたGoogleの技術労働者たちが解雇されたことを思い出した。やってることいっしょじゃん。経営関連メンバー全員がパレスチナで起きていることや不買などの市民運動に完全関心な人で構成されていて、「虐殺に加担」とかいきなり言われてびっくりしたのかな。
仮にそうだとしても、なんのヒアリングもなしに「認知の歪み」などと一方的に判定するって、シンプルに失礼すぎる。そのうえ投稿者への断りもなく丸ごと消す対応しかできないって、すごい判断力・行動力だなと思った。実際に消された側はめちゃくちゃ傷つく。自分の書いた言葉をいきなり消されるってことが初めてだったのだけど、かなり怖い。この会社では上の立場であればそうした対応も可能、というメッセージ発信にもなっている気がするし、とても有害だと思った。ていうか、もう退職する人間の言葉だったら揉み消してもいいとおもっているのか。ナレッジ共有システム全体に失礼。正しいことをしていると思ってやっているならその正しさはかなり歪んでいるように見えるよ。
もっと早くから社内でイスラエルが今していることやAWSとGoogleの関連について話題にしておけばよかったのかもしれない。でもそのような、もしかすると見る側の多くが耳を塞ぎたくなるような社会問題についてそう簡単に発信できるような環境ではなかったなとも思う。なぜなら、ストレスを溜めた従業員の発した言葉が、上に立つ人にとって取り下げるよう圧をかけるということは、自分が知る限り過去1年で2回あったので。それらも、今回も、もちろん伝え方を工夫すればこういうことは回避できたのかもしれない。でもそれはまた別の問題。
ページ削除の対応について、わたしがいなくなった後どういう受け止め方をされているのか。わたしはもう業務PCを返却済で情報システムへのアクセス権限もない。成仏しきってない亡霊みたいな気分になってる。
見えないなりに勝手に想像している。「これっておかしくないですか?」と表立って言ってくれる人は誰もいない気がする。そんな一方的な発言削除がまかり通る組織環境がかなり心配だし何かメッセージを投げかけておきたい。パレスチナで起きていることやAWSがイスラエルに協力してしまっていることについても耳を塞いで終わりにしようとしている人がいるなら、もうすこし自分にできる範囲で説明なり話をしたい。地味な話でどう伝達するかも悩ましい。メールを送るとか、誰かを中継するみたいなルートか。
うちは残念な会社だしもう忘れちゃえばいいよ!と言ってくれた同僚。恨んでもしょうがないとハローキティが歌って踊る動画を送ってくれた友人。気にかけてくれてありがとう。特にその同僚は一緒に怒ってくれていて救われた。1人少なくともいっしょに怒っている人がいる。よく寝て体調がマシになったと冒頭書いたが、この人とのメッセージのやりとりがなければまだぐったりしていた気がする。
亡霊としてこれからとりたいアクション案を書いたけど、何かのためのようでいて、本当は単なる恨みでしかないのかもしれない。そうならないようにしたい。勤め先の籍が実際になくなる10月末日までに何ができるのか、何もしないのか、もう数日寝かせて考えようかなあ……。似たような理不尽を経験した人や、所属先に抗議文を書いたことがある人がもしいたら相談したい。
今日は10月25日。昨年、最高裁で性同一性障害特例法の4号不妊化要件(生殖不能要件とも言う)に違憲判断が下ってからちょうど1年になる。2003年に成立して以降、3号「子なし要件」に年齢上限ができたことを除けばまったくまともに改正されてこなかった特例法に対して、20年後の昨年とうとう最高裁が「時間切れ」を言い渡した日だった。
この判決の前後はメディア対応が死ぬほど忙しく、表に出たものも表に出なかったものも含めて、嵐のような日々だった。表に出たものとしては、朝日新聞の以下の記事。
(プレゼント機能を使ったので、10月26日 23:28まで全文無料で読めます。)
ただ悲しいことに、判決から1年経っても、わたしの忙しさはほとんど変わっていない。そしてなにより、特例法も改正されていないままだ。
以下、判決から1年なので、いくつか関連することをメモしておきたいと思う。
https://digital.asahi.com/articles/ASRBY0TJTRBWUTIL024.html?ptoken=01JB218X7A1JZW00A58PMQHTJX
https://nordot.app/1221615796547535167
ヒトラーに忠実だった将軍必要 在任中のトランプ氏、独裁に興味 | 2024/10/23 - 共同通信
これはある意味期待を裏切らないトランプの酷い話ですが、歴史の消費のされ方として一考には値しそうです。ここまで事実関係が狂っているともはや「歴史」の話でもなさそうですが。
そもそも私の知る限りでは、19世紀から20世紀前半のドイツの陸軍というものは、国の中の国みたいな強い力と独立性を持っていて、そうそう政治家の言いなりになる「忠臣」ではなかったような。プロイセン将校団はヒトラーを受け入れましたが、戦況が悪化すると暗殺企てるくらいの独立心はありました。
昨年出た『ナチスは「良いこと」もしたのか』 https://amzn.to/3YeCdj0 の書評会に参加する機会がありまして、この本はトランプ的なナチに関する俗説を検証した良書ですが、著者の一人の小野寺先生が、歴史には事実・解釈・意見のレイヤーがある、という議論をされていました。
しばしばこれが混同されるのですが、意見は何を言っても自由でも、事実や解釈に関しては研究で明らかに誤っていると検証されているものもあります。同書は「この俗説は事実としておかしい」と論証したものですが、それを勘違いして「俺の意見表明を抑圧するのか!」とキレる人が続出しているようで…
ただ私はもっと悲観的に思うのですが、意見の前提の解釈、さらに基盤の事実の段階で、このSNSと動画ばやりのポスト・トゥルースの時代では、もはや共通理解が成立しなくなってきているのではないでしょうか。「この史料にこう書いてある」という、いちばん基本のところでもう捻じ曲げられてしまう。
ほぼ生活、ときどき音楽を聴く、映画などを観る。お酒が好き。FXをやっている。LDHのことを気にしがち。she/they