最低賃金制度は、最初は「中卒女子フルタイム雇用の初任給」をモデルとし、一応自立した労働者の最低基準でしたが、その後主婦パートや学生アルバイトなど、「他に主たる稼ぎ手のいる世帯の『家計補助』的労働者」モデルとなり、生計を維持できない水準の賃金になりました。
それが今世紀に入って実態との乖離が著しくなり、2007年の法改正で、最低賃金の決定においては生活保護の水準を下回らないようにすることが定められましたが、現在も生活保護との「逆転」が指摘され、「最低賃金では生活できない」と言われ続けています。
その大きな要因は、生活保護費との比較において、社会保険料など公租公課の負担、住居費の負担、生活上必要な自動車の費用などが正しく反映されていないためです。特に保護世帯の住居費は家賃不要や入所中世帯を含んだ「平均」で比較されるため、実際の相場の家賃よりも低いと指摘されています。
振り返れば、最初の「中卒女子初任給」モデルも、当時は寮生活や実家通勤も多かったので、日本の最低賃金は初めから住居費が十分含まれていなかったのかもしれません。
これからの最低賃金は、単身世帯の相場の家賃・光熱費+α(転居や更新の準備等)を賄える水準で考えるべきです。