アニメ『スキップとローファー』を観ていると、主人公・みつみの叔母である(直接の言及はないが十中八九トランスジェンダー女性であろう)なおちゃんの解像度の粗さばかりに目がいってしまう。みつみの学校周り(ローファーを履いている子たち)の解像度ばかり鮮明で、そこから抜け出た、大人の、なおちゃんの解像度の粗さが。

「男装」した状態でみつみのクラスメイトと偶然知り合い、「男装」を解除して普段の姿になったあと、「保険証」を見せて「男性」であることを証明するなおちゃん。「生物学的には男」というセリフを口にするなおちゃん。びっくりしたときなどに過度に男声っぽい発声と声色になるなおちゃん……。

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なおちゃんはどうしてこの作品に登場しているんだろう。「叔母」という便利な(とくべつ言及しなくてもストーリーが成立するような)ポジションにマイノリティを据え置いて、主な舞台である学園の中でトランスが出てくることはない、その、一抹のさみしさ。

アニメではあんな感じのなおちゃんだけど、マンガではどうなんだろう。

田島列島『子供はわかってあげない』における重要キャラクター、アキちゃん(門司くんの"兄")の、マンガでの描かれ方と実写映画での演じられ方の乖離を思い出す。マンガ内でもちょこちょこ危うい表現はあったが(門司くんに”兄”と紹介されたり)、田島列島の絵柄も相まって、他のキャラに明かされない限りマンガ内世界(そしてマンガの読者)ではアキちゃんはパスしているように見えた。アキちゃんは田島列島の次作『水は海に向かって流れる』の終盤にも一度登場するのだが、そのときアキちゃんは誰からもジェンダーについて言及されなかったから、『水は〜』しか読んでいない人にとってアキちゃんはシスジェンダーの女性キャラクターにしか見えないだろう。

でも実写映画ではそんなアキちゃんのイメージ(マンガの絵柄によるパス)はぶち壊されていた。中性的な顔立ちの男性俳優が起用され、髪型もスポーツ刈りレベルの短さに改悪され、「オカマ口調」で喋る実写オリジナルのシーンが足され、アキちゃんは完膚なきまでに「(露悪的なまでにばればれの)トランスジェンダー女性」に仕立て上げられていた。最悪だった。

そういう改悪もこれまで観てきたから、アニメ『スキップとローファー』のなおちゃんが原作のマンガでは実際どんな描かれ方をしているのか、読んでみないとなんとも言えないな、とも思う。でもなあ……。

『ユーフォリア』の日本語吹き替えで、ハンター・シェイファー演じるジュールズに女性声優があてられていたのはうれしかった。

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